大手業者査定額の2倍以上での売却も実現できることがある不動産オークション。しかし、正しく知識武装していないと、とんでもないトラブルに見舞われてしまうことも…? 本記事では、不動産オークションの流れと、実際に起きたトラブルの例を紹介する。 * 本記事は、不動産鑑定士である土屋忠昭氏の著作『不動産は「オークション」で売りなさい』から一部を抜粋、再編集したものです。

決済時は、登記名義変更のための全ての書類が必要に

最後に決済時のことについて確認しておきます。

 

決済とは、不動産取引で、買主が代金全額を支払い、売主が物件を買主に引渡すとともに、所有権を買主に移転し、登記名義を買主に変更することです。

 

この決済時に注意すべきは、不動産取引は全て現金または銀行振込による一括支払いで、買主の代金の支払いと売主からの物件の引渡しおよび登記名義の買主への変更は同時履行(引換給付)が原則とされているところです。

 

不動産取引では、代金の後払い、あるいは、登記移転は後で、という信用取引はありません。

 

そこで、決済時点で、即、登記名義を変更できる書類(登記済権利証あるいは登記識別情報、売主の印鑑登録証明書、実印を押印した登記原因証明情報等)を一つ残らず揃えることが不可欠なのです。

実印のゴミをとったら「印影と合致しない」・・・!?

決済時にトラブルが起こりやすいのは、これら書類に関するものです。書類のいずれかと、実印を決済場所に持っていくのを忘れるケースがあります。これから述べることは、いずれも実際にあったことです。

 

①権利証の間違い

まちがえて取引物件とは別の不動産の権利証を持ってきたケースがありました。

 

②実印の間違い

ご主人が決済の場所に奥様から渡された実印を決済場所に持ってきたが、その実印は奥様の実印であったケースがありました。

 

奥様から渡された実印は、「奥様の実印」だった…! (写真はイメージです/PIXTA)
奥様から渡された実印は、「奥様の実印」だった…!
(写真はイメージです/PIXTA)

 

③移転登記できない

売主が決済に備えて実印のゴミをとったら、元々の印鑑登録証明書の印影にゴミがついていたものだったため、印影と実印が合致せず、登記手続を受任していた司法書士から移転登記できないといわれたケースがありました。

 

④名義の不一致

売買物件の登記名義と印鑑登録証明書の名義が一致していなかったケースがありました。具体的には、戸籍上の名はアイであるが、売主が「子」がついていない名前はいやであるということで、売買物件購入時の住民登録をアイ「子」という名前で登録し、不動産登記もアイ「子」としたために起こったのです。

 

以上のいずれのケースも、決済するためにはどうにか解決しないといけません。①②については、本来の権利証、実印を用意してもらい、③については、その日のうちに印鑑登録をゴミを除いた実印で改めて行ってもらい、④についてはアイ「子」では戸籍上も住民登録上も存在しないので、改めて正しい証明書を急いで取ってもらい、無事予定日に決済を完了しました。

 

これらの異常事態に対応することも宅建業者の責務であると思いますし、このような事態が生じないように私たちは、決済取引案内に決済時に売主、買主に用意してもらうべきものをリストにして示しています。口頭のみによる伝達だけは絶対しないように心がけています。

 

 

本連載は、2018年3月23日刊行の書籍『不動産は「オークション」で売りなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

不動産は「オークション」で売りなさい

不動産は「オークション」で売りなさい

土屋 忠昭

幻冬舎メディアコンサルティング

かつてないほど不動産が売りづらい時代…高値売却を実現するマル秘テクニックを大公開! 空家増、相続問題、暴落懸念…さまざまな理由で、不動産を売りたい人が増えています。 しかし、売主と買主、一対一の「相対取引」で…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録