物件の周辺環境の変化、急な修繕、家賃滞納など数々のリスクが潜む不動産投資。資産形成の手段として注目が集まっているものの、事前にリアルな失敗パターンを知ることは必要不可欠です。そこで本記事では、一級建築士の西田芳明氏が実例を用いて、「家賃保証」の落とし穴を解説します。

「黙っていても家賃収入が入ってくる」訳ない

地主さんや家主さんにアンケートを取ると、「マンション経営って難しそう。誰か専門家がやってくれないか」「もしマンションを建てても借り手がいなかったらどうしよう」と、買った後、建てた後の管理についての不安があがります。

 

そんなオーナー様の不安を解消する方法としてよく耳するのが「一括借り上げ・家賃保証」という言葉です。

 

一般的に一括借り上げ・家賃保証というのは、空き部屋が出ても家賃を保証してくれることを意味します。しかし、そんな甘い話、本当に信じていいのでしょうか。

 

大抵の借り上げ業者の営業マンはこう言います。

 

「黙っていても家賃収入が入ってきます!」「30年間こちらで家賃保証をするので大家さんは安心してください!」「管理もこちらでするので大家さんの手間もかかりませんよ」

 

賃貸経営には、大なり小なりリスクが伴うものです。本当にこんなうまい話があるのでしょうか。融資という多額の借金を抱えるのは大家さん自身です。それにも関わらず、借り上げの本質をよく知らないまま業者の言葉を鵜呑みにしてマンションを建築してしまい、後で後悔する大家さんが後を絶ちません。

「家賃8万円でないと入居者がつかない」の詐欺

事業用物件のオーナー様の事例をお話ししましょう。こちらはある経済誌にも掲載されていたという事例なのですが、象徴的な話ですのでご紹介します。

 

当初、18万円の家賃で3戸の物件を貸していた方でしたが、その後、住宅建設会社の営業マンがやってきて、「値下げしないことには、共済会が立ちいかない……」と泣き言をいってきたといいます。そこで仕方なく家賃を下げることを了承するも、3戸すべてが空室になったといいます。

 

すると今度は、「家賃8万円でないと入居者がつかない」と提案され、さすがにここで「家賃を保証してくれるというのに、話が違うぞ」と注文をつけたのですが、そのまま交渉は物別れのままといいます。

 

18万円の家賃であれば、当初16万2000円の保証がされていたのですが、値下げした8万円だと7万2000円の保証にしかなりません。家賃を下げたことで事業計画は大幅に狂ってしまいます。

 

空室対策での家賃の値下げは、保証会社が一緒になって負担してくれるのではありません。すべてオーナーの負担なのです。

 

こうした問題の温床には、住宅建設会社の問題があります。借り上げ会社の営業マンたちは、6か月間でひとつの契約も取れなければクビにさせられるところもあるといいます。なのでみな、無理をしてでも契約をとりにいきます。

 

家賃を高く設定するなど、無理な契約内容をつくることもあるので、契約したはいいものの、銀行の融資がつかず、物件が建たないというケースもあるほどです。そのため、違約金をめぐる苦情や訴訟が絶えないといいます。

「30年間家賃保証するので安心してください」の嘘

世の中、うまい話は、そうそうありません。特に投資というものに関しては必ずリスクが伴います。「長期一括借り上げ」といっても安心はできません。そこにはリスクがあります。

 

私の経験では「30年間家賃保証をするので安心してください」と言っていても、4~5年もたてば空室が目立ち始めてくるのですが、ほとんどの場合、オーナーさんが家賃保証をその会社に請求しても相手にされず、挙句の果てには保証されているはずの家賃を下げさせられてしまいます。「30年間家賃保証するので安心してください」という甘い言葉も10年たてば真っ赤なウソだったということもよくある話なのです。

 

ある地主様の事例をご紹介します。

 

この方は、もうすぐ相続が起こりそうだということで、お父様が所有している畑を有効活用し、資産の圧縮を考えていました。

 

そのタイミングに、あるハウスメーカーの「30年間家賃が下がらず、経営も安定する」という提案があり、30年一括借り上げをするということで、木造のワンルーム賃貸アパートを建設したといいます。

 

しかし、「30年間は経営は安定だ」と安心していたのもつかの間、9年目あたりから空室が目立ちはじめ、ハウスメーカーの営業マンが家賃の値下げ交渉をしてくるようになったのです。「家賃の保証はする」と言っていたじゃないですかと言ったものの、「交渉に応じていただかないとサブリース契約を継続できない」の一点張りです。

 

そもそも、この地主様の土地は駅からも遠く、近くには商業施設も少ない住宅街にありました。このような場所にワンルームマンションの需要があるのでしょうか。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

このハウスメーカーは、アパートの建築をするときに、そこに賃貸の需要があるかどうかをよく調査せずに自社の商品を当て込んでいただけで、近い将来、空室だらけになってしまうのは目に見えています。

 

結局、「家賃交渉に応じないと、サブリース契約を解消します」という半分脅しともとれるようなことを言われ、10年目、12年目と2度に渡り家賃の下落交渉に応じることになりました。15年目の今、サブリースで一定の賃料は入りますが、そこから水道代、電気代、固定資産税などのランニングコストを差し引くと結局「赤字」経営になってしまします。

 

読者の方は、こういう営業トークに惑わされず、しっかりとした判断をできるように、知識を持っておくことが大切です。

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