コロナ禍においては、学校の授業も従来の方法から変更を余儀なくされ、オンラインを導入するところが増えています。しかし、その学習効果を不安視する保護者は少なくありません。ハーバード大学、東京大学、開成高校のそれぞれで教鞭をとったベテラン教育者で、東京大学名誉教授・北鎌倉女子学園学園長の柳沢幸雄氏が、子どもたちの現状を伝えるとともに、不安を抱える親へアドバイスします。※本連載は、『「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHPエディターズ・グループ)より一部を抜粋・再編集したものです。
過酷な環境下、親自身も「人生を楽しむ」余裕が必要
日本の子どもや若者は、世界の国々と比べると自己肯定感が低いことで知られています。しかし、その根底には、親の自己肯定感が低いことがある、とも言われます。自分がうまくできなかったから、子どもには社会でうまくやってほしい、自分の自己肯定感が低いから、せめて子どもは高くしたい。でもそれはなかなか実現しにくいのです。
自己肯定感は親子セットで高いほうがいいのです。「そんなことを言われても、自分を誇るところなんかない」と思っているかもしれません。でも、そんなことはありません。毎日仕事をがんばり、お金を稼いで子どもたちを育てている。そのことだけでも、非常に立派な大人です。もっと自分に誇りを持ってよいのです。
日本人は謙遜し、すぐに、「自分なんてたいしたことがない」「いえいえ、もうぜんぜんダメで」などと言います。でも、アメリカ人は、「自分はこんな素敵なことができる、なかなかいいでしょう?」とごく自然に言います。この違いは大きい。
人生の楽しさを感じる力も違ってきます。日本にいたときは悲観的だった私も、アメリカに渡って、180度変わりました。アメリカには、謙遜という概念があまりないのです。それより、自分をアピールできたほうがうまくいく。
そして、発言したことには責任を持ちます。こうした行動が親の自己肯定感となり、親がいきいきと楽しそうに大人の人生を生きていることが、子どもの自己肯定感も上げていくのです。
柳沢 幸雄
東京大学名誉教授
北鎌倉女子学園学園長
東京大学 名誉教授
北鎌倉女子学園 学園長
1947年生まれ。前・開成中学校・高等学校校長。東京大学名誉教授。開成高等学校、東京大学工学部化学工学科卒業。71年、システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。74年退社後、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻修士・博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、併任教授(在任中ベストティーチャーに複数回選出)、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2011年4月から2020年3月の9年間、開成中学校・高等学校校長を務める。2020年4月より北鎌倉女子学園学園長に就任。
シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の世界的第一人者。自身も2人の男子を育て、小学生から大学院生まで教えた経験を持つ。
主な著書に『母親が知らないとヤバイ「男の子」の育て方』(秀和システム)、『東大とハーバード世界を変える「20代」の育て方』(大和書房)などがある。
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連載ハーバード・東大・開成で教えてわかった!「頭のいい子」の親の共通点