不登校の子が参加しやすいという、想定外のメリットも
新型コロナウイルス感染拡大で学校が休校になり、オンラインで授業を始めた学校が増えました。先生に対面で教えてもらわずに、勉強ってできるの? と、保護者も不安だったと思いますし、教師も大変でしたが、オンライン授業を始めた学校では、意外に浸透が早かったように思います。
折しも、2020年の春は新学習指導要領が始まる年でした。その内容を見ても、予想していたわけでもないのに、オンライン授業は、ある意味、新学習指導要領の理念の一部を担うようなものになったと思います。「2.新しい学習指導要領等が目指す姿(2)育成すべき資質・能力について」の中に、次のような記述があります。
「変化の中に生きる社会的存在として・複雑で変化の激しい社会の中では、固有の組織のこれまでの在り方を前提としてどのように生きるかだけではなく、様々な情報や出来事を受け止め、主体的に判断しながら、自分を社会の中でどのように位置付け、社会をどう描くかを考え、他者と一緒に生き、課題を解決していくための力が必要となる。」(文部科学省ホームページより)
学校に行けない中でも主体的に判断し、他者と一緒に生きて、課題を解決。まさに、このオンライン授業をやること、授業を受けることを示唆しているようにも思えます。オンライン授業は、できる環境にある学校とそうでない学校がありますが、私が2020年春から学園長になった北鎌倉女子学園では、2年前からアップル社と連携し、iPadが支給され、すでにインターネットを使った授業も進めていました。
ですから、休校中も非常に恵まれた環境の中、オンライン授業を実施できました。まず、朝は最初にクラス全員の出席をとり、全員の顔を映し出してから授業に入ります。授業は40分を午前中に3回。通常、中高生の授業は1時限50分のことが多いですが、40分にするのは、オンラインだといつもの授業より少し疲れることを配慮しています。
オンラインだから疲れるというより、オンラインで顔をいつも正面に向けていることに疲れるのです。授業中のことを思い出してみてください。ずっと先生のほうを向いて集中して聴いている生徒は何人いるでしょうか。隣の席の子にちょっかいを出したり、窓の外の風景を見たり、教師の話からときどきはずれる時間があるのがふつうです。50分、ずっと先生の顔を見て勉強に集中して、10分後にすぐ次の授業に入るのは大変だろうと考えているのです。
オンライン授業では、不登校だった生徒が、オンラインなら参加できるという想定外のメリットもありました。特に、画面の他にチャットで質問や発言ができるのですが、そこに積極的に書き込み、しっかり授業を聴く子がいます。ですから、オンライン授業は、できたら双方向がよいと思います。クラス全員の顔が見られ、声が聞こえる。一体感を持てます。多くの学校で同じようなことが見られ、クラスメイトも喜び、一体感が生まれたという話を聞きます。