家族や兄弟であってもトラブルになることが非常に多い「遺産分割」。遺恨を残さないためにも知識を身につけ、来たる相続に備えましょう。今回は実例を基に「遺産分割」のよくあるトラブルについて解説します。

税務申告のためならと思い、いわれるがままに記入…

【質問】

親が亡くなり、相続人4名で遺産分割協議をすることになりました。

私は、親の介護をしていたので、寄与分を主張していたのですが、他の兄弟はなかなか認めてくれず、話し合いは平行線になっています。

ある日、他の相続人から突然呼び出され、その場で「税務申告の期限が迫っているので、とりあえずは遺産分割協議書を作成したので、これにサインして欲しい」と遺産分割協議書を差し出されました。

その内容は、単に法定相続分で分けるという内容の書面で、遺産の内容についても今まで全く話に出ていなかった遺産などもあり、内容については不明な点が多かったのですが、とりあえずは税務申告のためならと思い、いわれるがままにサインしました。

その後も、相続人間で遺産分割の話し合いを続けましたが、ずっと平行線をたどっていたところ、他の相続人より、突然「遺産分割協議書があるから、これ以上は話し合う必要はない」といわれ、一方的に協議を打ち切られてしまいました。

前にサインした遺産分割協議書は、税務申告のため、という名目で、とりあえずサインしたものに過ぎず、相続人間で話し合って決めた内容ではないはずです。このような遺産分割協議書でも、有効となってしまうのでしょうか。

 

こんな遺産分割協議書でも、有効になってしまうの?(画像はイメージです/PIXTA)
こんな遺産分割協議書でも、有効になってしまうの?
(画像はイメージです/PIXTA)

 

遺産分割の協議を行い、相続人間で合意が得られた場合、その内容を遺産分割協議書にして、全員が署名・押印をする、というのが通常の遺産分割協議の流れです。そして、このような場合、遺産分割協議書に署名・押印すれば、その内容を後から覆したり、取り消すということは原則としてはできません。

 

もっとも、例外的に後から遺産分割協議の無効や不成立を主張して、これを取り消すことができる場合もあります。

 

主なケースとしては、遺産分割協議の錯誤無効を主張する場合です。すなわち、相続人のうちの誰かが、他に遺産があることを知っていながら、その遺産の存在を他の相続人に隠して遺産分割協議を成立させた場合で、しかも、その遺産の存在を知っていれば、別の遺産分割協議となっていたような場合です。

 

このような場合、「その遺産の存在を知っていれば、このような遺産分割協議書の内容で合意することはなかった」ということで、遺産分割の合意に対して錯誤無効を主張することができます。

 

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