原油価格 バイデン勝利なら上昇か⁉

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トランプ米大統領のシェールオイル生産推進策により、世界の需給バランスが崩れて原油価格は急落した。環境政策を重視するバイデン氏が大統領になれば、米国におけるシェール開発が抑制され、原油の需給関係は引き締まる可能性がある。極めて皮肉なことに、原油価格は、トランプ大統領再選なら停滞、バイデン氏勝利なら上昇するのではないか。

シェール開発促進策:政策効果による意図せざる価格下落

トランプ大統領は、2016年の米国大統領選挙において、シェールオイル・ガスの開発を積極的に進め、米国をエネルギー輸出国とすることで、雇用の拡大を図ると公約した。それに沿い、トランプ政権の下では規制緩和が実施され、シェール開発が進んだ。結果として、米国の原油生産量は、同大統領の就任時における日量894万blから、今年2月には同1,310万blへ大幅に増加した(図表1)。

 

期間:1910年~2020年9月18日 出所:EIAの統計よりピクテ投信投資顧問が作成
[図表1]米国の石油生産量と原油価格 期間:1910年~2020年9月18日
出所:EIAの統計よりピクテ投信投資顧問が作成

 

日量416万blに及ぶ米国の増産は、世界の石油需給に大きな影響を与えたと言えるだろう。米国内での過剰な供給が在庫の急増を招いたことで、原油価格急落の要因の1つになり、石油事業者を苦境に追い込んだ。もちろん、米国の需要者にとっては朗報であり、物価が安定してきた背景ではあるものの、意図せざる政策効果だったのではないか。

バイデン氏:地球温暖化対策に踏み込む

バイデン前副大統領は、今回の大統領選への公約として、地球温暖化抑止を柱の1つに据えた。具体的には、1)2050年までのゼロ・エミッション達成、2)温暖化抑止に10年間で1兆7千億ドルを投資、5兆ドルの民間投資誘発、3)EVの普及促進、4)大統領就任日におけるパリ協定への復帰…などが柱だ。

 

米国では、環境政策が必ずしも選挙にプラスに作用しないとされるなか、かなり踏み込んだ内容と言えるだろう。近年、米国各地で自然災害が頻発し、足下もカリフォルニア、オレゴンなど西部において大規模な森林火災が発生している(図表2)。企業経営においてESGが重視されていることもあり、バイデン陣営は、地球温暖化問題に世論の注目度が高まっていると判断したのではないか。

 

期間:1960~2019年 出所:NASAなどの統計よりピクテ投信投資顧問が作成
[図表2]米国での野火による焼失面積と平均気温 期間:1960~2019年
出所:NASAなどの統計よりピクテ投信投資顧問が作成

両候補の環境・エネルギー政策:イメージとは真逆の結果を生む可能性

9月26日付けフィナンシャルタイムズ(電子版)は、『米国の石油グループの間でバイデン大統領の場合への不安後退』と報じた。バイデン氏が大統領に就任し、厳しい環境政策を実施した場合、原油生産が削減され、新たなシェール開発が規制される結果、世界的な原油需給が引き締まるとの観測を説明している。

 

石油業界は、極めて強い政治力を発揮してきた。バイデン氏の環境政策は、一見するとエネルギー産業には厳しい内容との印象を受ける。しかし、石油業界が不安視していないとすれば、価格上昇への期待が背景にあるだろう。原油価格は、エネルギー業界に理解のあるトランプ大統領再選なら停滞、環境重視のバイデン氏が勝利なら上昇…一般的なイメージとは真逆の結果を生む可能性がありそうだ。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『原油価格 バイデン勝利なら上昇か⁉』を参照)。

 

(2020年10月2日)

 

市川 眞一

ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

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ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。
著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。
2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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