2020年9月調査 日銀短観

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

大企業・製造業・業況判断DIは▲27と前回から7ポイント改善するものの、依然低水準

 

大企業・非製造業・業況判断DIは▲12で前回から5ポイント改善も、2期連続マイナス

 

20年度ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベース全産業・全規模設備投資▲0.9%

 

大企業も中小企業も非製造業の雇用判断DIは2ケタの「不足超」維持。製造業「過剰超」やや縮小

 

 

●9月調査日銀短観では、大企業・製造業・業況判断DIが▲27と前回6月調査(▲34)から7ポイント改善した。前回調査から改善したのは、17年12月調査で3ポイント改善して+25になって以来11期ぶりだ。

 

●新型コロナウイルスの感染拡大の影響で経済活動が大幅に停滞し、景況感が急速に悪化した6月調査からは幾分持ち直した。

 

●大企業・製造業で「悪い」と答えた割合は17年12月調査で4%まで低下したが、そこを底に19年3月調査では8%に、6月調査では9%、9月調査では10%に、12月調査では12%、20年3月調査では19%と増加し、さらに前回6月調査で41%まで大きく増加した。一転、今回9月調査では34%まで低下した。

 

●なお、9月調査で「悪い」と答えた割合は「最近」では34%だが、「先行き」では24%と10ポイント減少の見込みである。一方、「良い」と答えた割合は「最近」では7%、「先行き」では7%で変わらない見通しとなっている。

 

 

●9月調査の大企業・製造業の業況判断DI▲27は6月調査の「先行き」見通し▲27と同じで、足元の景況感が予測通りだったということになる。

 

●大企業・製造業の「先行き」業況判断DIは▲17と「最近」の▲27から10ポイントの改善が見込まれている。

 

●9月調査の20年度下期の想定為替レートは107円30銭で、足元の実際の為替レート(10月1日東京市場午前9時:1ドル=105円半ば)より若干円安水準である。

 

●大企業・非製造業・業況判断DIでは、前回6月調査で▲17と11年6月調査(▲5)以来のマイナスになったが、今回9月調査では5ポイント改善し▲12になった。

 

●前回6月調査で業況判断DIが+2だった小売は特別定額給付金の効果もあり16ポイント改善し、今回9月調査では+18になった。新型コロナウイルスへの対応策でテレワークが進む中、通信は6月調査の業況判断DIは+8から13ポイント改善し、9月調査では+21になった。感染拡大で訪日外国人客が急減したことで大きく影響を受けた、宿泊・サービスの業況判断DIは、前回6月調査で▲91という史上最低水準を付けたが、今回9月調査ではGOTOTravelキャンペーンの下支え効果もあり▲87と低水準ながら4ポイント改善した。

 

●大企業・非製造業で「悪い」と答えた割合は17年9月調査19年12月調査まで4%または5%で安定的に推移していたが、今年に入り悪化、20年3月調査で一気に8ポイント悪化し13%に、前回6月調査では19ポイントも悪化し32%になった。今回9月調査では27%へと若干改善した。

 

●大企業・非製造業・業況判断DIの「先行き」は▲11と「最近」の▲12より1ポイントと僅かな改善が見込まれている。「悪い」と答えた割合は「先行き」は20%で「最近」から7ポイント減少している。一方、「良い」と答えた割合は「最近」では15%、「先行き」では9%で6ポイントの減少だ。「良い」が減っていることからは、先行きが見えない新型コロナウイルスの感染拡大の影響に対する不安感の強さが垣間見られる。

 

●中小企業・製造業の業況判断DIは今回9月調査で▲44と6月調査の▲45から1ポイントマイナス幅が縮小した。6月調査の「先行き」見通しでは▲47とみていたので、足元の景況感は予測よりも良かったという結果になった。

 

 

●一方、中小企業・非製造業の業況判断DIは、13年12月調査で+4と、92年2月の+5以来21年10ヵ月ぶりのプラスになった。内需の底堅さを背景に、14年12月を新しい調査対象企業でみると25期連続してマイナスになっていない状況が続いていたが、20年3月調査で▲1と14年12月調査の旧企業ベースの▲1以来のマイナスがついてしまった。20年6月調査ではさらに悪化し▲26になったが、今回9月調査では▲22になった。▲22という数字は、6月調査時点の「先行き」▲33を11ポイント上回る水準で、予測よりはかなり良かったということになろう。

 

●中小企業・製造業の「先行き」の業況判断は▲38と「最近」▲44から6ポイント改善する見通しである。また、中小企業・非製造業は「先行き」を慎重にみる傾向があり、▲27とこちらは「最近」▲22より5ポイント悪化する見通しである。

 

●全規模・全産業の業況判断DIは、過去最悪の98年9月調査の▲48に近かった09年3月調査の▲46を底に上昇し、東日本大震災による一時的落ち込みなどを挟んで13年9月調査で+2と07年12月以来のプラスになり、以降プラスが続いていたが、20年3月調査で▲4と19年12月調査の+4から8ポイント低下しマイナスになった。さらに前回6月調査では▲31と2ケタのマイナスになった。今回9月調査では▲28に改善した。「先行き」は▲27と1ポイント改善の見通しだ。終息が見通せない新型コロナウイルスの影響で改善テンポはかなり緩やかな状態が続く見込みである。

 

●売上高や経常利益の20年度の計画の前年同期比をみると、修正率がマイナス傾向で依然厳しい状況が継続している。

 

●雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は20年3月調査までは人手不足感が強く、大企業・中堅企業・中小企業と全産業・製造業・非製造業のすべての組み合わせで「不足超」を意味するマイナスが2ケタであったが、前回6月調査では新型コロナウイルスの影響で、製造業が、大企業も中小企業も「過剰超」を意味するプラスに転じる結果となった。今回9月調査ではプラスではあるが、大企業、中堅企業ではプラス幅がやや縮小した。一方、非製造業では「不足超」の状態が続いており、大企業・全産業の雇用人員判断DIは▲2と前回6月調査の▲3から1ポイントマイナス幅が縮小したものの、マイナスを維持した。「先行き」は▲5と不足超がやや増加する見立てである。

 

●また、中小企業・全産業では6月調査の▲7から1ポイントマイナス幅が縮小したものの、9月調査は▲6とマイナスを維持した。しかし、「先行き」は▲12と6ポイントマイナス幅が拡大する見通しだ。雇用面の底堅さが感じられる数字だ。

 

●9月調査の20年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+1.4%と6月調査の+3.2%から下方修正になった。一方、20年度の中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は▲16.1%と6月調査の▲16.5%から上方修正された。中小企業は調査のたびに上方されるという傾向は維持されたが、改善幅は小幅だった。20年度の全規模・全産業の設備投資計画・前年度比は▲2.7%と6月調査の▲0.8%から下方修正となった。先行きの新型コロナウイルスの影響が読めない企業が設備投資に慎重になっている様子が窺われる。

 

●また、GDPの設備投資の概念に近い「ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの全産業・全規模の設備投資」の2020年度計画・前年度比は、大企業・全産業で+1.6%。一方、20年度の中小企業・全産業で▲14.0%だった。20年度の全規模・全産業では▲0.9%と6月調査の+0.9%の増加からマイナスに転じた。

 

●「企業の物価見通し」では、全規模・全産業でみて、販売価格の見通しでは、1年後が▲0.2%と前回6月調査より+0.1ポイント上昇、3年後が+0.6%と前回より+0.1ポイント上昇、5年後が+1.2%と前回と同じになった。一方、物価全般の見通しでは、1年後が+0.3%と前回と同じ、3年後が+0.6%と前回より▲0.1ポイント低下、5年後が+0.8%と前回より▲0.1ポイント低下となった。販売価格の見通しは近い期間で上方修正、物価全般の見通しは先行き中心に下方修正と反対方向の動きになった。

 

●今回の日銀短観は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、製造業、非製造業とも、業況判断が大幅に悪化し、リーマンショックの時以来の水準になった6月調査からは、業況判断DIを中心に改善はしたものの、厳しい状況が継続していることを示唆する内容だった。発表時点の日銀がある本石町の天気と短観の内容が一致する傾向にある。今回の短観は、現状は大雨ではないが、小雨交じりのはっきりしない天候で、午後には回復が予想されている本日の天気に例えられよう。冬季となる次回12月調査が注目される。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年9月調査 日銀短観』を参照)。

 

(2020年10月1日)

 

宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト
 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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