行動経済学的に、そもそも「ロスカット」は難しい
上がると思って買った株が下がり続けている場合に、みなさんはどうしますか?
じっくりと再上昇を待つのも1つの手ですが、一定の損失は諦め、どこかの時点で売却してしまう、いわゆる「ロスカット」も1つの手です。しかしロスカットに失敗した場合は、再上昇の機会を逃したり、下落し続けて損失を広げたりしてしまいます。
そんなロスカットの難しさを、まずは行動経済学から考えてみましょう。
行動経済学とは、人間が常に合理的な行動をするという前提を疑い、心理学的に観察される人間の行動を取り入れた経済学のことをいいます。そんな行動経済学を切り開いたとされる「プロスペクト理論」によれば、人間は収益よりも損失の方に敏感に反応しやすいそうです。
たとえばこの理論は、買った株が値上がりした場合、人間はそこから損をしないよう、利益確定のために早く売却しがちだといいます。一方、その株が値下がりした場合、人間はそれを取り戻すため、値が戻るのに固執しがちだといいます。結局、値上がりしたらすぐに売り、値下がりしたら「塩漬け」にしてしまう傾向が人間にはある、というのです。
これはあくまで理論であり、個人差もあれば状況次第の面もあり、人間の行動をすべて説明しきるものではありません。
しかし、「自分にもその傾向がある」「自分もそういう心理状態になる」と思う人は多いのではないでしょうか。
確かに人間は、収益よりも損失に敏感だという性質を持っているのかもしれません。そしてそれが、株式投資におけるロスカットの根本的な難しさになっているのかもしれません。
なお、プロスペクト理論は1979年にアメリカのカーネマン氏によって発表され、同氏は2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。