遺言書でできる4種類のこと
遺言書は、法的な力を持っていますが万能ではありません。できることは、限られています。具体的には、次のことを行うことができます。
●相続に関すること
・相続分の指定・遺産分割方法の指定・財産分割の一定期間の禁止
・遺贈の遺留分減殺方法の指定・特別受益の持戻しの免除
・相続人の廃除とその取消しなど
●財産の処分に関すること
・遺贈や寄付
・信託の設定
・生命保険金の受取人の指定、変更など
●身分に関すること・その他
・実子と認める認知
・後見人、後見監督人の指定
・祭祀承継者指定
・遺言執行者の指定など
●付言事項
・被相続人の思い、遺産分割の理由、家族へのメッセージなどを書くことができます。
遺言書は主に2種類…それぞれの特徴は?
遺言書には、主に本人が直筆で書き記す「自筆証書遺言」と、公証人に作成を依頼する「公正証書遺言」があります。
「自筆証書遺言」は、自分で書くので、費用もかからず手軽です。ただし、書き方や内容に不備があると、無効になることがあります。
一方、「公正証書遺言」は、2人以上の証人の立会いのもと、公証役場で作成し、原本を保管してもらえるので、紛失の心配はありません。また、検認(家庭裁判所において、相続人などの立会いのもと遺言書を開封し、遺言書の内容を確認すること)を必要としないのもメリットの1つです。
上記の2つ以外に、遺言者が遺言書の内容を秘密にしたい場合に利用する「秘密証書遺言」があります。遺言の内容を秘密にしたまま、公証人に遺言の存在を証明してもらえるのがメリットです。内容は直筆でもパソコンでもよく、直筆で署名・押印・封印したものを公証役場で封紙に署名、押印すれば完成です。ただ遺言の内容まで公証人はチェックしないので、遺言自体が無効になる可能性があります。
◆公正証書遺言
<メリット>
公正証書遺言の作成や認証を行う公証役場で、証人2人以上の立会いのもとで、被相続人が口述したものを、公証人が書き取って作成します。そして、それに各自が押印し、原本は公証役場に保管します。紛失の危険がなく、検認も不要なので、最も安全で確実な遺言書の形式といえます。
<注意点>
作成時に被相続人の印鑑証明や戸籍謄本、住民票などの必要書類を揃え、信頼できる公証人の選定を行います。費用に関しては、公正証書に記載する財産の額に応じて異なり、たとえば100万円以下は5,000円、5,000万円を超え1億円以下は4万3,000円です。
◆自筆証書遺言
<メリット>
被相続人が直筆で全文を書き、日付、氏名、押印のあるものが、正式の自筆証書遺言とされています。なお、財産目録に限り、パソコンの利用が可能です(2019年1月13日~)。誰の証人を必要ともしないので手軽で、費用もかかりません。これまでは、一般的に遺言書を自宅で保管していたため、遺言書が発見されなかったり、相続人に発見され偽造改ざんされたりするおそれがありました。しかし、民法が改正され、2020年7月10日から法務局での遺言書保管制度がスタートします。遺言書の形式も確認してもらえるので検認も不要になります。
<注意点>
自分で作成するため、いざ開けてみたら日付や押印がない、あるいは内容が不明瞭といった、遺言書の効力を発揮できない事例は少なくありません。ほかにも発見されなかった、第三者による変造や偽造、隠匿があったという事例もよく見受けられます。また、自宅保管の場合は、検認の手続きを行う必要があるので、その分、執行が遅れることになります。