正しい「自筆証書遺言」を作成するポイント、4つ
自分で手軽に作成できる自筆証書遺言は、多くの人に利用されています。しかし、書き方や内容に不備があると、法的効力のある遺言書と認められないケースがあります。自筆証書遺言の基本的な条件は、次の4点です。
①遺言書内容をすべて自筆で書く。ただし財産目録に関してはパソコン使用可。
②遺言書を作成した日付を書く。
③遺言者の氏名を記入する。
④押印する(実印、認印、拇印いずれも可だが、実印が安心)。
(参考:『【画像】一般的な遺言書の記載例』)
なお、遺言者に認知症の疑いがあり、すでに作成時においても本人の意思能力は低く、遺言書の内容を理解できない状態で書かれたと推測される場合は、遺言書が無効になるおそれがあります。
また、遺言者の子やその配偶者などの相続関係者の詐欺や強迫によって、本人の意思に反して無理やり遺言書を書かせられるケースも起こり得ます。その場合は、遺言無効確認調停を申立て、遺言書が無効であると確認してもらう裁判手続きを行います。
手続きを忘れると5万円以下の罰金…「検認」の申立て
被相続人の遺言書(自筆証書遺言または秘密証書遺言)を見つけたら、家庭裁判所に対し「検認」の申立てを行う必要があります。「検認」とは、相続人に対して遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、検認の日現在における遺言書の内容を明確にすることによって、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではないことに注意する必要があります。
なお、遺言書を発見したのに、検認の手続きをせずに、遺言を執行すると、5万円以下の過料が科せられます。また、発見時に封がされていたのに、検認をせずに開封した場合も5万円以下の過料が科せられます。
ほかにも検認を怠ったことにより、相続人や利害関係者に不利益が生じた場合は、損害賠償責任が生じる可能性があるので注意してください。また、遺言書を隠匿、偽造、変造した場合は、相続権を剥奪され、刑事責任を問われます。
「エンディングノート」で遺志を伝えるという選択
エンディングノートは、自分の死に備えて自分に関することや自分の希望などを書くノートのことです。法的な効力はありませんが、残された人に自分の意思を伝えるものとして、一般に知られるようになってきました。
親が高齢でも、子どもから「遺言書を書いてくれ」とは言いにくいものです。そのようなとき、エンディングノートを使ってみてはどうでしょうか。
エンディングノートは、あくまでも遺言だけでなく、自分が人生の終焉までどのように生きたいかを書き残すものです。明るく前向きな気持ちで取り組んでください。
大切なのは、親または自分、兄弟姉妹が元気なうちに書くことです。たとえば、銀行口座やクレジットカードの暗証番号、生命保険証書などは、万が一、親のお金を引き出さなければならなくなった時に役立ちます。また、延命治療をしてほしいか、介護が必要になったとき家で暮らしたいかといったことを聞いておければ、本人の希望に添った選択ができるかもしれません。
【監修】奥田 周年
OAG税理士法人 取締役
税理士、行政書士
【協力】IFA法人 GAIA 成年後見制度研究チーム
【編集】ビジネス教育出版社 『暮らしとおかね』編集部
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