弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

ある医師の離婚…「診療所のお金」は誰のもの?

【ケース2】

男性(夫・医師)と女性(妻)は婚姻し、2人の子をもうけました。婚姻以前より、夫は開業医として診療所で稼働していました。その後夫は診療所を法人化しました(医療法人社団・出資持分なし)。妻は事務長として診療所の運営に従事していました。

 

やがて夫婦の仲が悪くなり、離婚する方法で協議が進みました。医療法人の年間の収益(利益)は1800万~2300万円程度であり、医療法人が保有する資産は預貯金を中心として4000万円相当でした。これ以外に、帳簿上は医療法人は夫の複数の親族から数千万円の借入れがありましたが、実態を伴うものかどうかが曖昧でした。夫名義の預貯金は約1200万円でした。夫と妻は財産分与に関して見解が対立しました。

 

<争点(見解の違い)>

夫:医療法人の保有財産は分与対象ではない。出資持分はないので、「出資」が分与対象となることもない。仮に医療法人の保有財産を分与対象とするとしても親族からの借入れを控除すると評価額はゼロに近い。

妻:医療法人の保有財産は実質的に夫婦が築いたものであり、分与対象となる。

 

<結論>裁判外の和解成立

離婚する。医療法人の5年分の収益(利益)相当額を分与対象とする。妻の寄与割合は約5割とする。夫が妻に5500万円を支払う(うち約2000万円は将来の複数回の子の進学時に分割して支払う)。養育費は標準的金額よりも月額3万円低い金額とする。

次ページ二人三脚だった診療所…「親族からの借入れ」が争点に

本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説! ●不動産や会社支配権、その他高額資産を…

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