弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

結婚前の「夫の預貯金」が資本となっていた…

<合意成立のポイント>

 

1 特有財産からの出資

夫から株式会社への出資の大部分は、婚姻前に夫が蓄えた預貯金(特有財産)から支出されていました。婚姻後に増資もなされており、その際の出資は夫の特有財産と、婚姻後の収入(共有財産)が混在しており、比率を明確に特定することはできませんでした。

 

2 私的鑑定をベースとした和解交渉

夫側が株価の私的鑑定を行いました。後述のように、詳細な評価が示され、当事者は評価の内容をベースとしつつ、裁判所を介して和解交渉を進めました。

 

3 純資産方式

純資産による評価は1億円でした。会社の保有資産は現預金が多く、純資産としての評価の幅はあまりありませんでした。

 

4 収益還元方式

会社Aの収益については、直近5年間では、平均値から上下に30%程度の変動に収まっていました。経費の中には、妻への給与もありましたが、実際には稼働も支給もありませんでした。この「帳簿上の経費」については経費から除外(収入に加算)した上で、収益還元方式による算定が私的鑑定の中で示されていました。収益還元方式による株価は1億8000万円でした。

 

5 株価の変動(上昇)

前記の純資産方式、収益還元方式による株価の評価額のうち、婚姻後の株価の上昇分は3000万円~1億5000万円程度という評価でした。

 

6 全体的な調整

株式以外の財産の評価額3000万円を加えて、夫婦共有財産の合計額としては1億5000万円を目安とすることとなりました。これに財産分与割合30%を掛けると、分与額は約4500万円となります。最終段階では、夫の方が離婚成立への希望が強かったこともあり、分与額の目安にさらに500万円程度を加算した5000万円を解決金として和解が成立しました。

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本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説! ●不動産や会社支配権、その他高額資産を…

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