投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、DEEP INSIGHT。日々のマーケット情報や政治動向を専門家が読み解き、深く分析・解説します。

税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

>>>12/10(火)LIVE配信

 

為替市場がドル安・円高方向に傾きつつある。円/ドルレートは日米の実質金利差に大きく影響されてきた。FRBがゼロ金利政策の維持を示唆したことで、米国の実質金利はマイナス状態の長期化が想定され、ドル安バイアスが掛かり易い状況だ。仮に一段の円高となった場合、米国との交渉力を含め、市場が菅新政権の力量を問うことになるだろう。

円/ドル:実質金利差が大きく影響

1973年の変動相場制移行後のドルの実質実効レートは、インフレ抑止のため高金利政策を採っていた1980年代前半に大きく上振れしたが、長期的には100を中心に概ねプラス・マイナス10の範囲で振幅を繰り返してきた(図表1)。直近の循環では、米国経済がリーマンショックを抜け切った2011年7月の83.89を底に上昇に転じ、今年5月に113.39で天井を付けている。もっとも、引き続きドル高ゾーンと言える状況であり、新型コロナ・ショックで景気が失速したことを考えた場合、デフレ圧力を緩和するため米国政府・FRBがドル安を好ましく考えても不思議ではないだろう。

 

米国経済と日本の違いの1つは、景気後退期、構造的な需要超過の米国では物価上昇率がプラスに保たれる一方、供給超過の日本はマイナスになることだ。その結果、FRBと日銀が共にゼロ金利を採用した際の実質金利は、米国がマイナス、日本はプラスになる傾向がある。

 

期間:1973年〜2020年8月 出所:FRBの統計よりピクテ投信投資顧問が作成
[図表1]ドルの実質実効レート 期間:1973年〜2020年8月
出所:FRBの統計よりピクテ投信投資顧問が作成

 

円/ドルレートは、日米の実質金利差に大きな影響を受けてきた(図表2)。世界的な景気後退期においては、日本の実質金利が米国を上回るため、円に資金が流れてドル安/円高になり易い。さらに、円高になれば、日本の物価には一段の下落圧力が掛かり、デフレスパイラルの状況が起こり得る。実質金利が一段と上昇し、円高が加速するからだ。このループを抜けられなかったのが、リーマンショックから2012年秋までの約4年間だった。

 

2013年4月以降、「デフレからの脱却」を掲げた第2次安倍政権の下、黒田東彦総裁率いる日銀の量的・質的緩和が実施され、急速な円安局面となった。もっとも、背景は米国経済が本格的な拡大局面に入り、米国の実質金利が上昇したことだろう。日本の金融緩和だけでは、為替市場にあれだけの大きなインパクトは生じなかったのではないか。

 

期間:1993年〜2020年8月 出所:Bloombergのデータよりピクテ投信投資顧問が作成
[図表2]日米実質金利差と円/ドルレート 期間:1993年〜2020年8月
出所:Bloombergのデータよりピクテ投信投資顧問が作成

円高の洗礼:菅新政権の力量が問われる

足下、市場が織り込む米国の期待インフレ率は1.7%程度まで回復してきた。一方、FRBはゼロ金利政策の継続を示唆しており、当面、米国の実質金利はマイナスの状況が続く見込みだ。日米の実質金利差は拡大すると想定され、中期的にドル安・円高になり易い地合いが続くだろう。

 

仮に円高となった場合、日銀には2013、14年のような大規模緩和の余地がなく、マイナス金利の深掘りは副作用が大きい。さらに、為替の介入は、過去の円高局面では効果が限定的である上、トランプ政権が容認することは考え難くい。

 

円高が加速する場合、発足したばかりの菅義偉政権が何を語り、何をするのか、非常に興味深いところだ。一時の方便として介入するにしても、米国との交渉力、特に菅政権の要請に米国がどう反応するかなど、市場はその手腕を確かめたいところだろう。この為替を巡る副次方程式は、菅政権にとって目先の最も難しい課題の1つと言えそうだ。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『菅新政権の力量を問う為替の動き』を参照)。

 

(2020年9月25日)

 

市川 眞一

ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【11/19開催】相続税申告後、
約1割の人が「税務調査」を経験?!
調査の実態と“申告漏れ”を
指摘されないためのポイント

 

【11/19開催】スモールビジネスの
オーナー経営者・リモートワーカー・
フリーランス向け「海外移住+海外法人」の
活用でできる「最強の節税術」

 

【11/23開催】ABBA案件の
成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト
「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【11/24開催】事業譲渡「失敗」の法則
―M&A仲介会社に任せてはいけない理由

 

【11/28開催】地主の方必見!
相続税の「払い過ぎ」を
回避する不動産の評価術

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録