日本は超高齢社会を迎え、労働人口は目に見えて減少しており、年金財源の枯渇を防ぐべく、定年引き上げを実施する企業も増えています。そんな今だからこそ「貴重な人材をどのように扱うべきか」という課題を再考しなければ、企業は運営不能になってしまう可能性があります。本連載では、株式会社プレジデントワン代表取締役である松久久也氏の著書『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、資産としての「人材」とどう向き合うべきか解説します。

自分が「消耗品費」だという認識を持つ社員達…

ある会社の経理部でこんなやりとりがありました。本人たちに言わせれば、誰にでもできる簡単な作業を毎日繰り返しさせられているふたりの会話です。

 

「おれたち辛いよな。何の取り得もなくて」
「でもお前はまだいいよ、消耗品だから。おれなんか消耗品費だよな」

 

「おれたち辛いよな。」(画像はイメージです/PIXTA)
「おれたち辛いよな。」(画像はイメージです/PIXTA)

 

経理は地味な仕事ですが会社にとって重要な業務であることは間違いありません。一方は社長から頼りにされ、もう一方は存在感がうすい、そんなふたりの会話です。人は立派な財産、つまり、資産であるのにそうした扱いがなされていない企業は多いものです。この話を聞いて身につまされた人もいるのではないでしょうか。

 

自分が消耗品なのか、消耗品費なのか、経理は地味な業務であるだけにその認識の違いは作業効率に大きく影響するのではないでしょうか。

 

人を使い捨てのコマのように扱う会社の社員は「消耗品費」です。これに対してたとえ厳しい職場であっても人を資産として扱う会社の社員は「消耗品」となります。この微妙な違いで人の気持ちはまったく変わるものです。

社員に自信を持って仕事をしてもらうために

自らを消耗品費と言うのはいささか自虐的ですが、人を本当に大事にしない会社は、表向きには「企業は人なり」と唱えていたとしても、その実態は社員を消耗品費として扱っているのではないでしょうか。

 

自分が費用勘定に属する存在であると知れば、人は自信を持つことはできませんし、積極的に会社の未来をつくりにいくという気持ちにはなれないでしょう。費用勘定であることになれきってしまえば、成長することをやめてしまうかもしれません。

 

人生の大半を会社で過ごすという人は多いと思います。その会社での自分の立場が消耗品費であるというのでは、やりきれないに違いありません。人間の尊厳というものがまったく保てません。

 

企業は合理的な存在であり、感情の入る余地はないと考える経営者は多いものです。しかし、人生が会社生活一色であった時代が終わり、プライベートと会社生活のバランスをいかにうまくとるかというテーマが浮上してきた現在、資産としての人をしっかり見つめ直す必要があるでしょう。

 

そもそも企業社会は厳しいものです。生ぬるいことを言っていては生き残れません。だからといって、いつまでも人を費用勘定として扱ってもよいということにはなりません。人生の大半を会社で過ごす、潜在能力を無限に秘めた人材を費用として捉えず、その資産としての側面に光を当てることによって、新たな競争力を獲得できるのではないでしょうか。

 

※本記事は連載『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』を再構成したものです。

 

松久 久也

株式会社プレジデントワン 代表取締役

 

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松久 久也

幻冬舎メディアコンサルティング

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