自分が「消耗品費」だという認識を持つ社員達…
ある会社の経理部でこんなやりとりがありました。本人たちに言わせれば、誰にでもできる簡単な作業を毎日繰り返しさせられているふたりの会話です。
「おれたち辛いよな。何の取り得もなくて」
「でもお前はまだいいよ、消耗品だから。おれなんか消耗品費だよな」
経理は地味な仕事ですが会社にとって重要な業務であることは間違いありません。一方は社長から頼りにされ、もう一方は存在感がうすい、そんなふたりの会話です。人は立派な財産、つまり、資産であるのにそうした扱いがなされていない企業は多いものです。この話を聞いて身につまされた人もいるのではないでしょうか。
自分が消耗品なのか、消耗品費なのか、経理は地味な業務であるだけにその認識の違いは作業効率に大きく影響するのではないでしょうか。
人を使い捨てのコマのように扱う会社の社員は「消耗品費」です。これに対してたとえ厳しい職場であっても人を資産として扱う会社の社員は「消耗品」となります。この微妙な違いで人の気持ちはまったく変わるものです。
社員に自信を持って仕事をしてもらうために
自らを消耗品費と言うのはいささか自虐的ですが、人を本当に大事にしない会社は、表向きには「企業は人なり」と唱えていたとしても、その実態は社員を消耗品費として扱っているのではないでしょうか。
自分が費用勘定に属する存在であると知れば、人は自信を持つことはできませんし、積極的に会社の未来をつくりにいくという気持ちにはなれないでしょう。費用勘定であることになれきってしまえば、成長することをやめてしまうかもしれません。
人生の大半を会社で過ごすという人は多いと思います。その会社での自分の立場が消耗品費であるというのでは、やりきれないに違いありません。人間の尊厳というものがまったく保てません。
企業は合理的な存在であり、感情の入る余地はないと考える経営者は多いものです。しかし、人生が会社生活一色であった時代が終わり、プライベートと会社生活のバランスをいかにうまくとるかというテーマが浮上してきた現在、資産としての人をしっかり見つめ直す必要があるでしょう。
そもそも企業社会は厳しいものです。生ぬるいことを言っていては生き残れません。だからといって、いつまでも人を費用勘定として扱ってもよいということにはなりません。人生の大半を会社で過ごす、潜在能力を無限に秘めた人材を費用として捉えず、その資産としての側面に光を当てることによって、新たな競争力を獲得できるのではないでしょうか。
※本記事は連載『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』を再構成したものです。
松久 久也
株式会社プレジデントワン 代表取締役
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】