脳が疲れ情報を処理しきれなかったとき、ながら行動のとき、気持ちが焦ったときなどに、思いもよらないミスをしてしまうことがあります。ヒューマンエラーを防止するには、活動の流れを追って「要因」を見つけ出すことが重要なのです。※本記事は化学系会社にて5年間ISO規格の品質及び環境マネジメント事務局を担当していた尾﨑裕氏の書籍『ヒューマンエラー防止対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

どうして人はエラーを起こしてしまうのか…

人が普段の活動を行っている中でヒューマンエラーを起こす時、どのようにマイナスの要因が影響するのでしょうか。事例を挙げて考えたいと思います。

 

以下に示す事例では、実際に自分がそこで働いている様子をイメージしていただくために、あえて主となる登場人物を“あなた”に置き換えています。事例の中で実際に自分がその職務を実行しているつもりで、各事例の中の“どこに不整合があるのか?”を考えてみてください。

 

事例の中で“問題だと思ったポイント”や、“疑問に思った点”などの不整合を探してみてください。考えるときのポイントは、各事例をm-SHELモデルに当てはめることです。そのときに、その職場の中で働く自分に対し、周囲のどの要素が自分に対してどんな影響を与えているのかを考えてみてください。

事例:慣れた業務で「うっかりミス」発生

あなたは、郵便局の窓口でお客様対応の業務を担当しています。この仕事を担当して、もう5年になり、通常の業務については、やるべきことは全て把握しているつもりです。

 

今あなたは、新人の木村めぐみを実際に窓口に座らせ、オンジョブトレーニングを行っているところです。フロアの奥では、郵便局長と先輩の女性1名が各自の業務を行っています。この時、近くに住む山崎徹が通帳を更新するため、郵便局にやって来ました。

 

山崎から「現在使っている通帳の記入欄がほぼ埋まってしまった。これから新規の仕事
を始めるので、この機会に通帳を新しくして、その仕事に関係するお金のやり取りを全て新しい通帳に記載しておきたい」という申し出がありました。通帳の利用条件を山崎の希望に合わせ設定するなど、手続きとしてはよくある案件で、あなたにとっては慣れた業務です。

 

「慣れた業務」のはずだったが… (画像はイメージです/PIXTA)
「慣れた業務」のはずだったが…
(画像はイメージです/PIXTA)

 

隣の郵便物の発送窓口では、新人の木村めぐみが少し戸惑いながら顧客の対応をしています。木村めぐみはまだ配属されてから3か月で、かなり仕事にも慣れてきたところですが、今行っている処理が初めてで自信がないためか、あなたに対して頻繁にアドバイスを求めてきます。あなたは、自分の業務と並行しながら彼女の教育を続けました。

 

次ページ午前中の忙しい時間が過ぎたあとに…

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