「駆除すべき対象としてしか見ていなかった生き物に対して、ネズミさんたちと呼びたくなるほどに親しみを感じている」「解き明かして得たネズミさんたちの習性が、今後のドブネズミ駆除に役立つのであれば、私にとってこれ以上喜ばしいことはない」――ネズミ捕獲のプロ・山﨑收一氏は書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎MC)で、そう語っています。

なにげなく振り返るとドブネズミが近寄ってきていた

巣がいくつあるのか、個体数がどれほどなのか全く不明なので、捕獲具の設置数が生息数を上回る数にする必要があった。餌付けを行って全ての個体を捕獲する気でいたからである。

 

設置するスペースを広く取れる場合、1カ所に並べて3~4台設置し、積み上げることができる場所では2段にして設置した。一度餌付けをしておいて、全ての個体を一斉に捕獲するという作戦である。

 

餌はいつものように食パンを用いた。1枚を40個ほどに切り分け、それぞれの捕獲具の中に20個、入口の前に誘因のために2〜3個置いた。12月21日には中のパンを食べている事が確認できたので、設置後2日で餌付けが成功した事になる。

 

シャッターで仕切られた店舗の外でも喫食が認められたので、捕獲具の数を増やして店舗外にも設置し、合計38台を設置した。試作専門の業者に依頼したので全て手作りである。

 

年末までに、12月21、23、24、26、29日と5回点検を行い、 必要に応じてパンの交換と補充を行った。フリーモードに設定していたのに、29日にはかなり大きい個体が巣から最も遠い店舗外で1頭捕獲され、中で死んでいた。

 

ロックモードに切り替えて捕獲する前日に測定するためのはかりを購入するつもりだったので体重は測定できていないが、優に300gは超えていると思われた。設置後3日以内に死んだのだが、体を丸くして 座ったまま死んでいた。体毛が毛羽立っていたのが印象的である。

 

鼻の先が出血していたので、少しは出ようとして努力したのだろう。だが途中であきらめ、ストレスによる心労で座ったまま眠るように死んだように見えた。

 

12月26日には、巣近くの店舗内に設置した7箱すべてのパンの残量が0になっていて、パンを交換した後に面白い事が観察された。なにげなく振り返るとドブネズミが近寄ってきていたのだ。

 

写真を撮って記録したが、捕獲具にパンを入れる時のガチャガチャと言う音を聞きつけて2匹が飛んできたようである [写真1]。

 

[写真1]
[写真1]

 

先に来た個体が、巣から最も遠い捕獲具、つまり左下の捕獲具に入ろうとしている姿が写っていて、奥には少し小さめの個体が顔を出している。

 

水揚げされた水産物の加工作業は夕方から始まり翌日の早朝に終わるので、点検とパンの交換は閉店前の9時頃に行っていた。

 

食パンは小魚よりもよほどおいしかったのだろう。捕獲具の中のパンがなくなっても、同じ場所に定期的に運んでくれるパンを楽しみに待っていたことになる。

 

私はこの時に思った。

 

餌付けによる捕獲法は卑怯な方法だと。

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捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

山﨑 收一

幻冬舎メディアコンサルティング

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