国民の「約3人に1人が65歳以上」という時代が到来
2015年に行われた国勢調査によると、日本の人口は1億2709万5000人。前回調査の2010年からの5年間に96万3000人(0.8%)減少したことが分かりました。人口が減るのは1920年の調査開始以来、初めてのことです。
人口が減少した原因は、以前から問題になっている少子化です。死亡人数に対して生まれてくる子供の数が少ないことで、人口が減っているのです。
同じ調査で65歳以上の高齢者が人口に占める割合は27.3%。女性では65歳以上が30%を超えています。
今後、有効な対策を講じなければ、日本の総人口はさらに減少し続け、2050年には1億人を割り込む見込みです。一方で、総人口が減る中で65歳以上の高齢者はしばらくは増加が続き、団塊世代が75歳を迎える2025年には総人口に対して30%を超えると推計されています。
これは国民の約3人に1人が65歳以上ということですから、これまでとはまったく違う社会が到来するとみていいでしょう。
深刻な「働き手不足」で、高齢者を支えることが困難に
人口減少と少子高齢化が日本社会にもたらす影響のうち深刻なのが、労働力不足です。多くの産業で働き手が足りなくなることが心配されています。
生産年齢人口と呼ばれる15〜64歳の人口は2015年には7696万人ですが、2030年には6889万人と、約800万人減少すると予測されています。これは、2015年には高齢者1人を生産年齢人口(15〜64歳)2.3人で支えていたのが、2030年には生産年齢人口1.8人で支えなければならなくなるという計算です。
日本企業はこのまま、働き手の減少に手をこまねいて衰退への道を歩むしかないのでしょうか──。
国も推し進める「シニア人材の活用」
2013年4月1日、高年齢者雇用安定法が改正され、年金(定額部分)の支給開始年齢が65歳に引き上げられました。
また、内閣府が掲げている成長戦略の「雇用制度改革・人材力の強化」には、「高齢者等の活躍推進」として次のような方針が明記されています。
「生涯現役社会の実現に向けて、高齢者の継続雇用に取り組む中小企業に対する職域開発等の支援を行うとともに、高齢者等の再就職支援の強化、地域の多様なニーズとのマッチングによるモデル的な就労促進の取組への支援等を実施する」
つまり、国は日本企業の生産性維持・向上のために「シニア人材の活用」へと舵を切ったのです。シニア人材は労働力不足にあえぐ日本企業にとって〝一筋の希望〟と言っても過言ではありません。
もちろん、外国人を雇用するという方法もありますが、日本には独自の言語や企業文化があるため定着までに時間がかかります。
やはりこれまで「企業戦士」として事業活動を引っ張ってきたシニア人材の活用こそが生き残りへの道なのです。
シニア人材に特化した派遣会社・求人サイトも増加
65歳以上で働いている人は、2014年時点で約681万人。これは高齢者の5人に1人が仕事をしているという計算です。
シニア人材に特化した派遣会社も増えていますし、シニア向けの求人サイトも次々にできています。求人サイトでもシニア層向けの求人情報が掲載されています。また、最近ではシルバー人材センターでも業務を拡大する動きが出てきました。
シルバー人材センターと言えば、草刈りや清掃、包丁研ぎといった単純かつ短時間で済む仕事を扱っているというイメージがあります。しかし、それではもっとしっかり働きたいというシニアの要望に応えられないので、就業時間は週に「20時間以下」から「40時間以下」へと引き上げられたのです。それに伴い、地域のコンビニと組んで、シルバー人材にコンビニ業務を実地で覚えてもらい、派遣するという取り組みも始まりました。
今後、シニア人材がますます求められ、活躍するようになることは間違いありません。
60~64歳の不就業者の3割以上、65~69歳では2割以上の人が就業を希望しているというデータもあり、仕事をしたくても働けない人も一定数いることがわかります。
今は過渡期と言えるかもしれませんが、65歳を過ぎても働くのが当たり前という社会になりつつあることは疑いようがないのです。