また総務省の2018(平成30)年の家計調査によると、無職で60歳以上のひとり暮らし家庭では、毎月の支出は平均で14万9603円なのに対し、年金と利子などの収入は12.3万円程度なので、不足分の月々4万円近くを貯蓄から切り崩している計算になります。
もっとも、夫婦ふたり暮らしの高齢世帯でも平均で月に4万円以上が赤字なので、ひとりだろうが誰かと暮らしていようが、老後は年金だけでは生活ができず、基本的に家計は赤字になるという覚悟が必要です。
身体的自立能力が低下し、誰かに介助してもらう必要が生じたとき、たとえば訪問介護
をお願いすれば費用がかかります。ひとりで自宅で暮らすことが困難になり、老人ホーム
へ転居する場合は、ある程度まとまった金額の入居金が必要になるかもしれません。お葬
式をするにしても、お金は必要です。
定年退職後には、資産運用で利益を出さない限り、新たに貯蓄を始めるのは難しいので、
若いうちから、①住宅ローンは定年退職までに払い終わるような計画を立てる、②定年退職までに、その後の生活に必要な貯蓄をしておく、③定年退職後は、年金と貯蓄の範囲内
で生活できるよう生活設計をする、といった心構えが必要です。
そのためには、自分はどこでどんな介護をされたいか、どんなお葬式をしたいかなどを考え、いくらぐらいのお金が必要になるのかをシミュレーションしておくことは、ひとり暮らし高齢者にとってはとても大切です。
それでも経済的に立ち行かなくなった場合には、市区町村役場に相談すれば、自宅を担
保に生活資金を貸してもらえることがあります。貸してもらえない場合は生活保護を申請
することもできます。
③生活的自立…家事能力が重要に
生活的自立とは、掃除や洗濯、料理など身の回りのことが自分でできるかどうかです。もともとひとり暮らしの人は、男性でも自分で家事をやることに慣れているかもしれませんが、「男は外で仕事をし、女は家庭を守るべきだ」という考えの男性のなかには、家事は妻や母親任せで、自分では一切したことがないという人は少なくありません。