病状・余命の告知を、誰と受けるのか
病気が治る見込みがなく、死が避けられない状態になったとき、ひとり暮らしの人は特に、その事実を知りたいかどうかを元気なうちに考えておく必要があります。事実をすべて知りたい人もいれば、怖いので知りたくないという人もいるでしょう。人それぞれの考え方ですので、どちらが正しいということはありません。
これまでの日本の病院では、家族だけに病状や余命を知らせるのが主流でした。昨今で
は、患者本人に告知する病院が増えていますが、それでもたいがいは家族も同席のうえで
医師が告知をします。
家族を同伴せず、患者ひとりで説明を受けても構わないのですが、病名を知らされると、頭が真っ白になって、その前後の記憶がまったく残らないほど動揺する人は少なくありません。そのため、病院では家族の同席を求めることが一般的です。
命に関わる状況ではなくても、病名を聞くだけでショックを受けることもあります。たと
えば、発見が早く治る見込みがあっても、「がん」と宣告されたら、「もしかして手遅れなのか」「死ぬのだろうか」などという思いが頭をよぎり、医師の話を聞けなくなってしまうかもしれません。
しかし、ひとり暮らしをしている高齢者のなかには、同席してくれる家族がいない人もいるでしょう。治る見込みがあるならいいのですが、命に関わる告知は、想像以上に大きな精神的ダメージをもたらします。家族や親戚がいないのであれば、同席をお願いできる友人を見つけておくといいでしょう。
病状や余命を知った後のショックや不安を乗り越え、どんな治療をしようか、残された時間をどう生きようかということを前向きに考えられるようになるには、信頼できる人たちからのサポートが不可欠です。
もちろん、告知された本人だけでなく、同席した家族や親しい友人も、頭が真っ白になって何も覚えていないことはよくあります。レコーダーの準備をして、医師とのやり取りを録音し、後で聞き直せるようにしておく工夫も一案です。