子どもや孫がいても、夫婦だけで暮らす家庭が増加中
子どもや孫はいても同居せず、夫婦だけで暮らす家庭も増えています。2018(平成30)年の内閣府「国民生活に関する世論調査」では、「老後は誰とどのように暮らすのがよいと思うか」という質問に対して、子どもと同居したい人は23.4%で、同居や近居ではなく、「子どもとは別に暮らす」と回答した人が36.0%と上回りました。
夫婦ふたりで暮らしていても、配偶者のどちらかが先立つときが必ずやってきます。
2015(平成27)年の時点で、65歳以上の人のうち、妻と死別した男性は144万人、夫と死別した女性は719万人もいます。夫婦ふたりで暮らしてきた高齢者は、配偶者と死別しても、子や孫との同居を望まず、そのままひとりで暮らしたいと思うことが少なくありません。「子ども夫婦と一緒に暮らして気を使うならば、ひとり暮らしをしたほうが気楽だわ」と考える人が多いからです。
別居していた子ども夫婦と新たに同居を始めると、生活環境ががらっと変わりますので、
高齢者にとってはとてもハードルが高いことも事実です。
20年ほど前、ひとり暮らしになった親を子どもたちが呼び寄せて同居をするという「呼び寄せ高齢者」が増えました。しかし呼び寄せられた高齢者のなかには、新しい土地で生活になじめず、友人もできず、引きこもったり寝込んだりする兆候が出た人が少なくありませんでした。行き慣れたスーパーで買い物をする、顔なじみの人が近所にいるといった
些細なことが、実は高齢者の生きがいにつながっているのです。
その意味で、ひとり暮らしの不安や孤独はあっても、住み慣れた土地に住み続けることの利点は大きいといえます。「人生最後はひとり」。自分の人生を人に委ねることなく、思うように生きたいと望むなら、現在ひとり暮らしかどうか、あるいは子どもがいるかどうかに関係なく、私たちは、ひとりで人生の最期を迎える覚悟をしなければならないのです。