エクアドルの格上げ事情

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ヘッドライン『IMF、新型コロナ感染拡大で新興国への関与の可能性』(2020年3月25日号)で新興国の債務問題を取り上げた際、具体例としたのが産油国エクアドルでした。当時の原油価格下落と、新型コロナウイルスの感染拡大がエクアドル財政を直撃したからです。4月にエクアドルは選択的デフォルトとなりましたが、債務軽減と国際通貨基金(IMF)の融資合意で格上げとなりましたが、懸念は残ると見られます。

エクアドル:格付け会社S&Pとフィッチがエクアドルを格上げ

格付け会社S&Pグローバル・レーティング(S&P)は2020年9月1日にエクアドルの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をSD「選択的債務不履行(デフォルト)」からB-へ格上げしました。見通しは安定的としています。

 

また、9月3日には、フィッチ・レーティングス(フィッチ)はエクアドルの長期発行体デフォルト格付けをRD(制限的デフォルト)からB-へ格上げしています。

どこに注目すべきか:選択的デフォルト、ステップアップ、EFF、選挙

ヘッドライン『IMF、新型コロナ感染拡大で新興国への関与の可能性』(2020年3月25日号)で新興国の債務問題を取り上げた際、具体例としたのが産油国エクアドルでした。当時の原油価格下落と、新型コロナウイルスの感染拡大(図表1参照)がエクアドル財政を直撃したからです。4月にエクアドルは選択的デフォルトとなりましたが、債務軽減と国際通貨基金(IMF)の融資合意で格上げとなりましたが、懸念は残ると見られます。

 

エクアドルについて、これまでの主な流れを振り返ります。エクアドルで新型コロナの感染は春に急拡大し、遺体の埋葬場所が不足するという、心が痛む話が報道されました。主力産業の石油も原油価格下落に直面、財政悪化から格下げが相次ぎ、4月に国債利子の返済猶予を債権者に求めたことから、フィッチとS&Pはエクアドルをデフォルトとしました。

 

その後、債権者とエクアドルとの間で返済条件の緩和について交渉を重ねた結果、高い参加率で合意に至ったことが今回の格上げの主な背景です。仮に合意に至らなければ、エクアドルは(恐らく)返済をお手上げするしかなかったでしょうが、緩和された返済条件であれば、当面は返済が行われそうです。格付け会社も2~3年はデフォルトリスクが低下したと分析しています。具体的にエクアドル債券(2040年7月償還)の利率を見ると合意前は10.75%でしたが、22年までは0.5%に引き下げられています。その後徐々に利率を上げ(ステップアップ)最後は6.9%に設定されました。

 

利子など返済条件緩和に加え、国際通貨基金(IMF)の支援融資合意も格上げの背景です。中期的な国際収支上の問題に対応する融資である拡大信用供与措置(EFF)についてIMFとエクアドルの交渉は一時停止していましたが、ようやく(スタッフレベルでの)合意に至り、65億ドルの融資が見込まれます。先の債権者が債務の緩和に合意する条件の一つにIMFからの融資が含まれていただけに、EFFは大変重要です。

 

ただ、エクアドルの経済は、新型コロナ感染拡大前から軟調です(図表2参照)。IMFからの融資のうちEFFは、新型コロナ対応で拡充された条件のつかない緊急融資でなく、財政規律など条件付きと見られます。エクアドルの現政権は比較的財政規律に前向きです。しかし、現政権は少数与党であるうえ、来年2月に選挙が予定されています。債券の利子が数年後には上昇することもあり、新政権の返済姿勢が注目されます。

 

なお、新興国の債務問題の背景は様々です。今回エクアドルのケースをご紹介しましたが、事情は国により異なり、別の国では、他の要因を考慮する必要もあると見ています。このテーマは今後も適宜フォローする予定です。

 

日次、期間:2020年1月22日~2020年9月3日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]エクアドルの新型コロナ累計感染者数と死亡者数 日次、期間:2020年1月22日~2020年9月3日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

四半期、期間:2012年1-3月期~2020年1-3月期、前年同期比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]エクアドルGDP(国内総生産)成長率の推移 四半期、期間:2012年1-3月期~2020年1-3月期、前年同期比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『エクアドルの格上げ事情』を参照)。

 

(2020年9月4日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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