理想の経営を目指すためには余裕を持った資金が必要である。さらには、会社を育てていくために、本業とは別にもう一つの定期的な収入源があれば、少なくとも生活していく分には安心だろう。「真面目で一生懸命頑張っている経営者」こそ不動産投資の恩恵は十分に受けられる――自身も投資家である曽我ゆみこ氏はそう語る。経営者に特化した初心者のための不動産投資のポイントをわかりやすく解説する。本連載は、曽我氏の著書『経営者のための初めての不動産投資戦略』(プレジデント社)から一部を抜粋した原稿です。

売却しやすいのは整形地…初心者は借地権に注意

売却のこととも密接に関わるのですが、土地の形状についてもお勧めのものがあります。メイン通りからちょっと入ったようなところで、かつ整形地がいいでしょう。整形地とは、長方形や正方形のことを指します。前面道路に接する辺の長さが長く、かつその道路が広いほど土地の価値は高くなります。さらに、それが角地ですと、建ぺい率も有利になるので、よりお勧めのものとなります。

 

では、不整形地はNGなのでしょうか。不整形地の典型は、旗竿地と呼ばれる形状で、道路に面している辺が極端に狭く、旗のような形をしているもので、これは都心や都心近郊の駅近では、珍しくありません。人気が低いため、割安に購入できるとあって、あえて購入する人もいますが、私はあまりお勧めしません。それは金融機関からの評価が低いため、融資がおりづらいということに加え、売却しづらいということがあるからです。

 

では、なぜ売却しづらいか。そもそも、建て替えができない建築不可物件である可能性があります。それは建築基準法で定められている接道義務を果たしていないからです。接道義務は、「幅員4メートル以上の道路に、建物の敷地が2メートル以上接していなければならない」というものです。加えて、重機が入りづらいため、解体するにも、建て替えるにも、費用も期間も通常より多くかかります。解体費用は2〜3倍というケースも少なくありません。

 

土地に着目すると、ときどき見かけるのが借地権を利用した物件です。借地権付き建物とは、土地の所有者自体は別にいて、その土地を利用する権利(地上権)だけがあるという物件です。地代の負担がある一方で、固定資産税と都市計画税を払う必要がないことが特徴です。所有物にはならないため当然、土地を売却することはできませんし、建て替えにも土地の所有者の同意が必要です。

 

経営者であれば、そうした土地の持ち主との交渉などに長けている方もいるでしょう。その意味では、意外とアリな物件かもしれません。ただ、担保力としては乏しいといえますし、初心者の購入はお勧めしません。

店舗付き物件は避けたほうがよし

居住用ではなく、テナントや事務所など、ビジネス用の物件もあります。一般には、店舗・事務所物件と呼ばれたりします。この店舗・事務所物件の最大のメリットは満室時の利回りのよさです。居住用に比べ、賃料を高く設定できるからです。また、退去時の原状回復のためにかかる費用は、居住用では貸し手側が負担するのが通常ですが、店舗・事務所物件では借り手が負担するケースが多くなっています。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかしながら、居住用に比べて店舗・事務所物件は定着率が低いといえます。事業として成り立たなければ、あっという間に撤退します。つまり空室リスクが高いのです。また、1階が店舗・事務所用で、2階と3階が居住用という物件もあります。これはハイリスク・ハイリターンな店舗・事務所用と、ローリスク・ローリターンの居住用が併設されているということで、よさそうに見えます。

 

しかし、実際に住む人(借り手)の気持ちを考えると、簡単ではありません。たとえば1階に中華料理店が入っていたら、虫も出るかもしれませんし、雑音も聞こえてきます。要は、快適に過ごせるよう、入るテナントのマネジメントが必要になるのです。

 

さらに、多くの場合、居住用の家賃に比べて、店舗・事務所用の家賃は高く設定されており、そこで生じる空室リスクは、やはりインパクトは大きいといえます。ただし、本業で飲食店のコンサルティング業務をしているなどの特異なケースであれば、むしろ相性がいい物件だといえます。しかしながら、最初の物件では、店舗付きではない物件をお勧めします。

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経営者のための初めての不動産投資戦略

経営者のための初めての不動産投資戦略

曽我 ゆみこ

プレジデント社

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