理想の経営を目指すためには余裕を持った資金が必要である。さらには、会社を育てていくために、本業とは別にもう一つの定期的な収入源があれば、少なくとも生活していく分には安心だろう。「真面目で一生懸命頑張っている経営者」こそ不動産投資の恩恵は十分に受けられる――自身も投資家である曽我 ゆみこ氏はそう語る。経営者に特化した初心者のための不動産投資のポイントをわかりやすく解説する。本連載は、曽我氏の著書『経営者のための初めての不動産投資戦略』(プレジデント社)から一部を抜粋した原稿です。

新築神話に騙されない! 大切なのは「利回り」

新築物件か、中古物件かということで迷う人も多いでしょう。前提として、新築であろうと、中古であろうと、最も大事なことは利回りが高いことです。ですから、物件価格が相対的に安くなる中古物件のほうが、有利だということがいえます(最近では新築も利回りが上がってきていますが)。

 

では、逆に新築物件はどのようなメリットがあるのでしょうか。皆さんは経営者ですので、減価償却という考え方には慣れていると思います。この減価償却は、不動産投資にも使えます。新築物件の場合、法定耐用年数が木造は22年、重量鉄骨は 34 年、RC造は47年と決められており、これらの数字で建物価格を割れば、毎年の減価償却費用が計算できます。

 

築浅の物件であるほど、残された減価償却期間が長いですので、実際には出ていかない経費として長期間にわたって計上できることになります。ただし、別の見方をすると、長期間で償却するので、毎年の計上金額は少なくなるともいえます。

 

さらに、新築物件は設備が新品ですので、修繕リスクが低いといえます。経験上、新築物件は、実需用の物件と同様に、新築プレミアムが加算されていることが多く、割高である可能性が否定できません。過去に取引実績があり、完全に信頼できる不動産販売会社があるならば、新築物件もよいでしょう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかし、「今回が一棟目」という本連載の読者の皆さんは、おそらくまだ不動産販売会社とそこまでの信頼関係を築けていないはずです。「新築のほうがお客さんもすぐにつきますし、家賃も高く設定できますよ」と言われると、もっともらしく聞こえます。

 

もちろん、販売会社がそのように言う理由も嘘ではありません。新築のほうが部屋を借りる人は気持ちがいいし、人気があるのは間違いないでしょう。それでも一度立ち止まって、借りる人の気持になって考えてみてください。同じようなグレードの部屋があったとき、新築物件かどうかは本当に重要でしょうか。それより家賃のほうが気になりませんか?

 

個人差があるので一概にはいえませんが、家賃のほうが大事だと言う人は、思いのほか多いものです。実際、入居者が入りやすいといっても、そこまで格段に変わるかと聞かれると、微妙なところです。強気の賃料設定ができるといっても、市場価格と比べて格段に上げられるかというと、やはり数千円程度しか高くできません。

 

ですから、新築物件の場合、すでに住んでいる人はゼロなので、満室になるまで、あるいは想定の範囲内まで埋まるのに一定の時間がかかります。その間は、キャッシュが入ってこないことになります。他の物件からのキャッシュがあるのなら、まだ安心ですが、入居者が入るまで、持ち出しは不安だと思います。

 

しかも客付けを行う不動産販売会社は、過去に取引のある大家さんの物件を優先して紹介する傾向があります。もし、ふたつの新築物件があって、一方の大家さん(投資家)とは過去に取引している実績があり、もう一方のオーナー(投資家)とは初めての取引という場合、他の条件が同じなら、やはり前者を優先するのです。

 

実績がゼロの皆さんであれば、すでに住民がいる中古物件のほうが、リスクは小さいといえるのです。

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経営者のための初めての不動産投資戦略

経営者のための初めての不動産投資戦略

曽我 ゆみこ

プレジデント社

働けなくなったとしても生活していけるだけの毎月の十分なキャッシュフローをつくる(当面のお金の心配をせずに本業に専念できる)。会社をたたんだ時に、法人、個人全ての借入が清算(返済)できるだけの純資産をつくる。毎月のキ…

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