順調に人生を歩んでいる姉と、躓きがちな妹。母親も高齢となり、そろそろ相続の心配が出てきましたが、姉妹の仲は円満とはいいがたく、母親は頭を抱えています。将来の相続トラブルは必至であり、いまからとれる対策を模索している状態です。どのような事前準備をすべきなのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
姉への妬みを爆発させる妹とトラブルに…
Hさんの一番の心配ごとは妹さんのことです。Hさんは夫や子どもたちに恵まれ、現在は正社員として仕事をしていますが、妹は離婚歴があり、子どももなく、派遣社員です。
父親が亡くなってしばらくのち、妹は長く勤めていた先から契約更新の停止を申し渡されました。そのころから、Hさんや母親に対して不満をぶつけてくるようになったそうです。
夫の海外転勤に帯同し、離れている間はとくに問題はありませんでした。その間に妹も再就職するなど、落ち着いていました。ところがHさんが日本に戻ってきてしばらくたつと、またしても荒れはじめたのです。
仕事も辞め精神的に不安定になった妹を、母親は大変心配し、Hさんに妹を病院に連れていくよう懇願しました。Hさんはあちこちの伝手をたどって必死で病院を探し、妹につきそって受診しました。
医師からはカウンセリングと投薬治療を提案され、状態はやや落ち着きを見せましたが、仕事に復帰できるところまでは至っておらず、突然怒り出したり泣き出したりと、不安定な状態を見せるときもあります。
不安定な妹では、母親の財産を管理できない
「妹の病状からは母親の老後を託すことはできないため、すべて私が責任を持つ覚悟でいます。妹には不動産の管理や運用も厳しいと思われますから、それも含めて私が引き受けるつもりで、母親も納得していたのですが…」
しかし、妹は最近になり、母親の財産はすべてもらいたいといいだしたというのです。「姉には仕事も家族もあり、なにも困ることはないから、それでいいはずだ」「昔から姉ばかりいい思いをしてきたので、我慢してきた自分に権利がある」というのが妹の理屈のようです。
しかし、今度は母親が妹の話に激怒。このままでは母親と妹の関係も断絶しかねず、Hさんはなんとかしなければと悩んでいます。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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