本記事は、税理士である関博氏の書籍『家族のトラブルをゼロにする 生前の相続対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再構成したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

老夫婦が知った「暦年贈与」という解。ただ問題点が…

「ただしこの暦年贈与にはいくつか注意点があります。その一つが税務当局から、『相続税の課税を免れるための贈与』と見なされた場合には、一括贈与と同じに扱われてしまうということです。先ほど源太郎さんが言われたように110万円を20年間続けて贈与するようなケースでは、そのように見られてしまう危険性が高まります」

 

「それでは、どうすればよいのですか?」

 

「少し課税されるような額を贈与してしっかり納税すればよいのです。たとえば年間の贈与額を120万円にします。非課税枠からはみ出した10万円分に1割の税金がかかりますので、1万円を納税することになります。これを続けると毎年119万円、20年では2380万円を贈与することができます。一方で20万円の税金がかかりますが、ちゃんと納税しているので、『課税逃れ』と見なされることはありません。たった0.8%の税金を納めるだけで課税リスクが回避できるのですから、積極的に税金を納めるべきだと私は思っています」

 

源太郎がうなずく。「フムフム。たしかに課税されないという安心感が買えると思えば、安いものですね」

 

「さらに言えば、贈与税を支払っても、『この金額までの贈与なら、相続税を支払うのに比べてお得』という金額、つまり損益分岐点となる贈与額というものがあります」

 

「先日いただいたシートで見た覚えがあります。たしかうちの場合は、110万円でしたね。子供たち3年に10年間贈与すれば203万円の節税になるとか」

 

「はい。その通りです。贈与する金額が増えればそれだけ相続財産が減り、相続税の額が小さくなります。ただその分贈与税は大きくなっていきます。ですから相続税と贈与税を合わせて一番小さな額になるのはいくら贈与した時なのか、損益分岐点を出してその額を贈与するのが暦年贈与を利用した最適の節税策なのです」

 

「うちの場合は110万円ですが、この金額は財産の状況によって異なるということですね?」

 

「はい。ですから、相続を専門とする税理士・公認会計士に相談して、話を聞くことが大切だと思います」

 

「たしかに……注意点は他にもあるのでしょう?」

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家族のトラブルをゼロにする 生前の相続対策

家族のトラブルをゼロにする 生前の相続対策

関 博

幻冬舎メディアコンサルティング

平成27年1月、改正相続税法が施行されました。中でも基礎控除の4割縮小により、今まで相続税がかからなかった家族も課税されるケースが増えることが話題となっています。うちの家族は仲がよいから大丈夫、あるいは財産が多くは…

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