高血圧や高脂血症を患っている方は多くいますが、検査結果の数値を重要視せず「体質だから」といって放置してしまうケースも散見されます。このような行為に問題はないのでしょうか。第一線で活躍する医師が考察します。本記事は『110歳まで元気に生きる! 実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

病気にかからないよう、老化を早めないよう、努力を

若い頃は体力も気力も有り余っていたので、多少の無茶はできました。けれども、健康が損なわれると行動範囲が狭くなるばかりか、寿命を縮めることにもなりかねません。

 

ふだんは意識することなく当たり前に行っていたことが、病気になったりケガをしたりするとできなくなることがあります。例えば、昨日まで軽快に階段の昇り降りをしていたのに、腰痛や膝痛になった途端、手すりにつかまって1段ずつ休みながら昇り降りしたり、歩けなくなったりすることもあります。病気になれば、安静を余儀なくされたり運動を制限されたり、趣味の散歩やジョギングができなくなるかもしれません。

 

このような状況になって初めて、私たちは自分の体に意識を向け、健康のありがたさを感じます。老化も同様です。年齢を重ねると、体力や機能の低下によってスムーズにできないことが増えてくるものです。しかし、これは自然なことであり、仕方ないと多くの人が諦め、受け入れています。

 

そんなとき、できなくなったことを嘆くのではなく、病気なら病気なりに、高齢なら高齢なりに、できることに目を向けて、それを活かした別の楽しみを見つければ良いという考え方もあるでしょう。

 

しかし、病気にならないように、あるいは老化を早めないように、予防をするという基本的な努力をすることが大切であると、私は考えています。

 

三度の飯よりマラソンが好きな私にとって、走れなくなるのは非常につらいことです。マラソンほど夢中になれる趣味を、果たして見つけられるだろうかと考えてしまいます。ですから、高齢になっても走っていられるようにするために、私は健康管理に気を配り、体力や機能が衰えないように老化予防や、日々のトレーニングにも努めています。

 

残念ながら今の科学では、病気も老化も完全に食い止めることはできません。けれども、本人しだいで病気は早期に発見して治療をすれば治る可能性は高くなるし、十分な睡眠を取り、生活習慣を改善すれば発症を未然に防ぎ、老化を遅らせることも可能です。

 

少し話がそれますが、皆さんは同級会に出席したとき、同じ歳のはずなのに先生と間違えるくらいに老けている人がいる一方で、当時とあまり変わらないほど若々しい人がいて、驚いた経験はないでしょうか?

 

この違いは本人の心がけであり、今の努力が数十年後に結果として現れてくるわけです。先に挙げたように、日本人の平均寿命は現在、男性が約81歳、女性が約87歳ですが、自立して元気に暮らせる健康寿命になると、男性は約72歳、女性は約75歳で、亡くなるまでの9~12年ほどは療養生活や介護が必要な状態で生活することが多くなっています。つまり、病気を抱えた状態で長生きすることになるのです。

 

これでは自由に動くことも、やりたいことも実現できなくなり、自分の世界を狭めてしまいます。そうならないようにするには、今から病気や老化のリスクを少しでも減らすことが重要です。それが、元気に長生きをして、最後まで人生を楽しむことにつながります。

 

長生きをするのなら、数十年後も元気でいることを目指し、それには今何をすれば実現できるのかを考えることが大切です。今からでも遅くはありません。110歳を目標にして、元気に寿命を延ばすことに挑戦しようではありませんか。

 

 

永野 正史
練馬桜台クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本腎臓学会 専門医
日本透析学会 専門医・指導医

 

110歳まで元気に生きる!実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント

110歳まで元気に生きる!実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント

永野 正史

幻冬舎メディアコンサルティング

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