危険因子を排除&治療しないと、健康維持は不可能
動脈硬化は、主に高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満・喫煙の五つが危険因子となっています。
これらの危険因子によって動脈の内壁にコレステロールが蓄積し、しだいに脂肪分が沈着すると血管が狭くなります。その結果、スムーズに流れていた血流と内壁の間に無理(ストレス)が生じ、内壁を覆っている細胞が壊れて血の塊(血栓)ができます。この血栓で冠動脈が詰まると心筋梗塞、血栓が剥がれて脳に流れていくと脳梗塞を起こします。また、血管に瘤ができると大動脈瘤に、また大動脈の壁が裂けると大動脈解離になります。
ですから高血圧や糖尿病、脂質異常症などの動脈硬化を引き起こすリスクの高い病気は、きちんと治療する必要があるのです。それには、繰り返しになりますが、生活習慣を改善したり、薬を使って病態をコントロールしたりすることが大切です。
最近の薬は持続力があり、1回服用すると1日以上効き目を保つものが多いのです(もちろん薬によってもその持続力は異なります)。飲み始めてからすぐに血中濃度は上がりませんが、2週間くらい飲み続けると上がってきて安定します。ですから、飲むタイミングが何時間かズレても問題なく効いた状態を保ち、次に服用することで安定し、常に一定の血中濃度を維持して病態をコントロールしています。
そのため、降圧剤を2~3日飲み忘れても血圧などの数値は上がりません。それにもかかわらず患者さんは、「先生、高血圧が治りました。もう薬はいりません」といいます。薬を飲まなくても1週間、1カ月と数値が正常範囲に収まっていれば問題ありませんが、改めて私が測定すると血圧は高くなっているケースがほとんどです。
この例に限らず、薬や治療を避けようとする患者さんが多いのです。なかには、「薬は飲み始めたら止められなくなるので飲みたくない」という人や、「若い頃から血圧やコレステロールが高かったし、これは遺伝で母親も高いけれど元気だから大丈夫です」という人も少なくありません。
そういうときに私は「医学的には治療をしたほうが良いと考えます」と、患者さんに説明します。そして、放っておいても良いとは医者の立場では言えませんから「本人が様子を見たいというので仕方ないと、カルテに書かせていただきます」と伝えます。このように、はっきり言わなければ「医者が良いと言ったから飲まない」と、患者さんに解釈される恐れがあるのです。
これまでに多くの患者さんを診てきた私の経験でいうと、検査数値が正常範囲を上回る状態を放っておいた患者さんに、長生きした人はいません。
また、親も高いけれど元気だから大丈夫という人は、それで本当に大丈夫なのかを親子ともにきちんと調べる必要があります。特に親の場合は、80歳とするなら心臓を調べると異常が見つかる可能性が高いのです。仮に、そのときは異常がなくても、2~3年後に発症するかもしれません。何より、遺伝的な要因で数値が高い人は、薬を止めるとコントロールが難しいケースがほとんどです。
実は、私自身も血圧やコレステロール値が高い体質のため、薬を服用しており、飲まずにいると数値が少し高めになります。ですから必要最小限の薬は服用して良い状態を保っています。
たとえ病気が見つかったとしても、適切な治療を受けて現状を維持し、悪化させないように生活習慣を改善することで、元気に長生きすることは可能なのです。必要な治療を受けずにいると、徐々に動脈硬化が進行していく危険が高まるうえ、老化も進んでしまいます。これでは、長生きどころか寿命を縮める結果を招くでしょう。