隠れている人に光をあてるため「クオータ制」の導入を
政府の審議会や専門家会議に「クオータ制」を導入すべきだと私は考える。クオータ制は、議会における政治家や企業の経営者に、男女の比率に偏りが生じないように一定の割合を義務付けるもので、格差を是正するための仕組みだ。すでに100ヵ国近い国で、国会議員や地方議会議員へのクオータ制が実施されている。
日本では、2010年12月に決定された「第3次男女共同参画基本計画」で、クオータ制の推進をうたっており、女性の国家公務員や国の審議会等の女性委員など政府が直接取り組むことができる分野については、具体的な数値目標を設定して取組を進めるとしている。
そのなかで、国の審議会等委員に占める女性の割合の目標は2020年までに40%以上60%以下、国の審議会等専門委員等に占める女性の割合の目標は2020年に30%とされている。この数字を見ながら、新型コロナ専門家会議のリストを見ると非常に感慨深い。数値目標など、まったく、箸にも棒にもかからない人数だ。なぜこの人選になっているのか、理解不能である。
クオータ制に対しては、「平等原理に反する」とか「逆差別」などの意見が出ることもあるらしい。だがクオータ制は「能力のない人に枠を与える」のではなく、「能力があるのに隠れている人に光をあてる」ものである。医療分野は、看護師を含め女性労働者が多いが、今まで医療制度を動かしてきたのは男性医師を中心とした「男性社会」であった。あえてクオータ制を導入することによってバランスを変え、従来の制度とは変えていったらよい。
新型コロナウイルス対策は、医療のみならず、今後の社会活動、経済活動をも大きく左右する。国民の生活全体を守るための対策を考えるチームであるならば、なおのこと、審議会や有識者会議にもクオータ制を導入し、若い世代、女性専門家など、従来とは違う顔ぶれを追加すべきである。
濱木 珠恵
新宿ナビタスクリニック院長