長らく続く不況下で、経営難に陥っている中小企業は数多くあります。しかしプロの目から見ると、その原因はビジネスそれ自体ではなく、税務や会計の問題であることも少なくないのです。目の前のビジネスに必死になり、会計部門の課題解決を後回しにしていた会社が、適切な会計処理の実施だけであっさり復活・躍進できた事例を紹介します。※本記事は『5G ACCOUNTING 最速で利益10倍を目指す経営バイブル』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

追い風が吹いている業界なのに、設備投資が足かせに…

【CASE2】運送会社
トラック1台ごとの収益管理で「勘と度胸」の経営から脱却

 

 ★課 題★ 

 

ここ数年、EC(ネット通販)市場が急速に拡大し、物流業界には追い風が吹いています。B社も年々、車両台数とドライバーを増やし、売上、利益ともに順調に伸びています。

 

「しかし、運転手の人手不足は深刻です。車両を増やすにあたってはまとまった設備投資も必要で、借入金は増えています。燃料代、修繕費、車両消耗品、車両減価償却費などコストと収益のバランスをどう取るか、経営の舵取りが難しくなっていると感じていました」

 

と社長は振り返ります。

 

B社はもともと給与水準が同業他社より高いので人材採用で優位性があり、しかも利益はきちんと確保できているところが強みです。社長としてはさらに、同業他社との差別化を図るため、新車両の導入を進めたいと考えていました。燃費が良く、故障も少なく、なにより運転手のモチベーションがアップするからです。

 

設備投資と利益確保、資金繰りのバランスを取れれば、攻めの経営をいっそう強力に進められます。一方で、最適な売上目標、従業員数、車両台数の組み合わせをどう考えたらいいのか、特に車両の設備投資に対する資金繰りがよく見えておらず、どこまで車と人を増やすべきかで悩んでいたそうです。

 

ちなみに、経理業務は社長の妻が長年担当。試算表の作成についても翌月末には会計事務所のチェックも終わって完成しています。ただし、管理会計の目線で作成されていないのが問題でした。すなわち、全社レベルの数値しか集計されていなかったのです。トラック1台あたりの燃料代や修繕費、消耗品などのコストは不明であり、それぞれのコストが適正な支出なのかどうか判断できない状況でした。

 

 ★対 策★ 

 

社長が顧問先の会計事務所に相談したところ勧められたのが、クラウド型AI会計システムです。さっそく使ってみると、原価管理が容易になりました。具体的には、トラック1台ごとに、走行距離、運搬した貨物の重量と売上、人件費、燃料代や修繕費、車両消耗品費、減価償却費、さらには間接部門のコストも按分して、月単位でデータが出るようになったのです。

 

法律で義務付けられているデジタルタコグラフのデータとも連動させ、これまで社内で活用できていなかった走行距離やスピードなどからトラック1台ごとに燃費も算出できるようになりました。

 

 ★結 果★ 

 

こうしてB社では、ドライバーの採用強化や新型車両の導入などに踏み切り、積極的な事業成長へ一歩、踏み出しました。社長によると、

 

「これまでの経営はいわば、勘と経験と度胸に基づくものでした。それを、数字に基づく科学的な経営に切り替えることで、思い切ってアクセルを踏むことができるようになった気がします」

 

とのこと。

 

細かいところでは、粗利の高いトラックのデータをチェックすることで、運転方法などの情報を社内でフィードバックすることを始めています。最近はこの分野のIT活用も進んでおり、容易に優良ドライバーのデータを共有できます。

 

なお、社長には息子が三人おり、長男はトラック事業、次男は経理など間接部門、三男はガソリン事業を担当。後継者育成にも、数字に基づく経営を活かしているそうです。 
 

 

 

 

 

岡本 辰徳

株式会社YKプランニング 代表取締役

 

鈴木 克欣

税理士法人SHIP 代表社員税理士

株式会社SHIP 代表取締役

 

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