投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、DEEP INSIGHT。日々のマーケット情報や政治動向を専門家が読み解き、深く分析・解説します。

税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

>>>12/10(火)LIVE配信

 

新型コロナ禍の下、世界的にIT・デジタル関連のアウトパフォームが続いている。米国では、NASDAQ/S&P500レシオがITバブル期に迫った。流動性の大量供給だけでなく、名目金利がゼロになったことで、バリュエーションの割高感に対する感応度が落ちたことも背景だろう。この相場の転換点は、長期金利の上昇によるイールドカーブの変化、即ち景況感の改善なのではないか。

NASDAQ/S&P500レシオ:ITバブル期との共通点

米国市場では、8月7日現在、ダウ指数の年初来騰落率が▲3.6%、S&P500指数は+3.7%だ。一方、NASDAQ総合指数は+22.7%と飛び抜けたパフォーマンスを示している。新型コロナ禍の下、時価ウェートの相対的に大きなIT・デジタル関連、バイオ関連などの企業の株価が急上昇したことで、NASDAQ/S&P500レシオは2000年代初頭のITバブル期に接近している(図表1)。

 

期間:1990年~2020年8月7日 注:NASDAQ/S&P500レシオは軸を逆にしてある 出所:各種データベースよりピクテ投信投資顧問が作成
[図表1]米国:長短金利金利差とNASDAQ/S&P500レシオ 期間:1990年~2020年8月7日
注:NASDAQ/S&P500レシオは軸を逆にしてある
出所:各種データベースよりピクテ投信投資顧問が作成

 

ITバブル期には、情報通信のブロードバンド化が世界的に急速な進歩を見せ、経済や社会の変化に対する期待感が関連する企業の株価を押し上げた。また、アジア経済危機の余波で金融緩和が進み、長短金利差が潰れてイールドカーブがフラット化していたことも見逃せない。結果として、バリュエーションの割高感への懸念が大きく緩和され、成長シナリオの追及が市場の主流になった。

 

足下の金融市場においても、同様の状況が起こっている。リーマンショックから12年を経て、FRB、ECBなどは金融政策の正常化を目指していたが、新型コロナ禍によりむしろゼロ金利政策と量的緩和を迫られた。その結果、長短金利のスプレッドはゼロ近辺となり、実質金利もマイナスゾーンを推移している。典型的な金融相場と言え、割高とも言えるバリュエーションは成長性と低金利で説明されるようになった。

ITバブル終焉の経験:景気の停滞感がグロース市場の鍵

8月7日に発表された米国7月の雇用統計は、若干のポジティブサプライズとなった。ただし、新型コロナ禍により3、4月に非農業部門雇用者数が2,206万人減少したのに対し、5月以降の3ヶ月における増加数は927万9千人に留まっている(図表2)。経済活動再開を急いだ結果、テキサス、フロリダ、カリフォルニアなどで新型コロナの感染者が急増したことから、官民ともにより慎重な再開対応を迫られるだろう。結果として、雇用の回復は緩やかなペースになるのではないか。

 

期間:2020年1月〜7月 出所:米国労働省の統計よりピクテ投信投資顧問が作成
[図表2]米国非農業部門雇用者数増減(前月比) 期間:2020年1月〜7月
出所:米国労働省の統計よりピクテ投信投資顧問が作成

 

この状況は、成長株主導の株式市場にとっては悪い環境ではない。もちろん、再びロックダウンとなれば、ほとんどの企業にとりダメージは大きいだろう。一方、景気の停滞感は、イールドカーブのフラット化を持続させることで、バリュエーション指標への警戒感を引き続き緩和すると見られる。その結果、中央銀行が供給したマネーの一部が成長株に向かうシナリは持続する可能性が強い。

 

逆に言えば、米国において景気拡大が鮮明になり、長期金利が上昇した場合、マーケットは転換期を迎えると予想される。IT・デジタル関連、バイオ関連などに代わって景気敏感株がアウトパフォームしたとしても、時価総額の違いにより市場全体へのインパクトは全く異なるだろう。その時、株式市場は次の調整局面を迎えるのではないか。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『グロース主導の相場を見極めるシグナル』を参照)。

 

(2020年8月14日)

 

市川 眞一

ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【11/19開催】相続税申告後、
約1割の人が「税務調査」を経験?!
調査の実態と“申告漏れ”を
指摘されないためのポイント

 

【11/19開催】スモールビジネスの
オーナー経営者・リモートワーカー・
フリーランス向け「海外移住+海外法人」の
活用でできる「最強の節税術」

 

【11/23開催】ABBA案件の
成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト
「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【11/24開催】事業譲渡「失敗」の法則
―M&A仲介会社に任せてはいけない理由

 

【11/28開催】地主の方必見!
相続税の「払い過ぎ」を
回避する不動産の評価術

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録