米国株か?世界株か? PART2

投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、DEEP INSIGHT。日々のマーケット情報や政治動向を専門家が読み解き、深く分析・解説します。

 

前回のDeep Insightレポート『米国株か?世界株か?』では、バブルの歴史を振り返りながら米国株に対する世界株の優位性について考察した。今回はバリュエーションや相関係数といった定量的な分析から、世界株の投資意義について検証する。結論から言えば、長期的な視点に立った世界株への分散投資は、定量的な観点からも正当化されるのではないかと考える。

バリュエーション格差が拡大する米国株

PBR(株価純資産倍率)でみたMSCI米国株とMSCI世界株(除く米国株)のバリュエーション格差は2007年以降、拡大傾向にある(図表1)。米国株の場合、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoftの頭文字)といったROE(自己資本利益率)の高い大型成長株が米国株を牽引したこともあって、PBRは上昇傾向にある。一方、世界株(除く米国株)は、GAFAMのような大型成長株が不在だったこともあり、PBRにおける米国株に対するディスカウント率(世界株(除く米国株)PBR÷米国株PBR-1)は今年7月末時点で-58%と、すでに2000年のITバブル期のピークを超えており、米国株の割高感が高まっている。

 

また、MSCI米国株のMSCI世界株(除く米国株)に対する相対パフォーマンスは2010年から米国株優位の展開となっており、一極集中の傾向が長期化していることが分かる(図表2)。しかし、過去の歴史を振り返れば、特定の国・地域が継続して高いパフォーマンスを示すことはまれであり、いつまでこの傾向が続くかは定かではない。

 

月次、期間:1995年1月末~2020年7月末 上段:各指数のPBR推移、下段:世界株(除く米国株)PBR÷米国株PBR-1 出所:MSCI、ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成
[図表1]PBRの比較(MSCI世界株(除く米国株)とMSCI米国株) 月次、期間:1995年1月末~2020年7月末
上段:各指数のPBR推移、下段:世界株(除く米国株)PBR÷米国株PBR-1
出所:MSCI、ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成

 

月次、配当込み、米ドル建て、1979年12月末=100で指数化 期間:1979年12月末~2020年7月末  出所:MSCI、ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成[図表2]MSCI世界株(除く米国株)指数÷MSCI米国株指数  月次、配当込み、米ドル建て、1979年12月末=100で指数化  期間:1979年12月末~2020年7月末  出所:MSCI、ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成
[図表2]MSCI世界株(除く米国株)指数÷MSCI米国株指数月次、配当込み、米ドル建て、1979年12月末=100で指数化
期間:1979年12月末~2020年7月末
出所:MSCI、ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成

世界株=米国株ではない理由

MSCI世界株指数における米国株の構成比率は今年7月末時点で66%だ。一見すると世界株では十分な分散効果が得られないようにも思われる。しかし、MSCI世界株指数と同米国株指数の相関係数の推移を見ると、直近こそ0.99と非常に高い相関を示すものの、相関係数は常に変化しており、過去必ずしも高い数値を示していたわけではなかった(図表3)。

 

むしろ、86年~96年当時はかなり相関が低かったといえる。これは、局面に応じて株価パフォーマンスや国別構成比率が大きく変化することなどが背景にある。国際分散投資が容易になったことで近年は相関係数が高く出やすいとの指摘もあるが、それでも2006年4月、2013年5月、2017年10月の前後では相関係数が低下しており、今後も相関係数が高止まる保証はどこにもない。好調が続く米国株に投資しつつ、割安な米国以外の国にも分散投資を行う世界株への投資は、理にかなっているのではないだろうか?

 

12ヶ月ローリング、月次リターン、配当込み、米ドル建て 期間:1979年12月末~2020年7月末 MSCI株価指数はNET TOTAL RETURN(USD)を使用  出所:MSCI、ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成
[図表3]MSCI世界株指数とMSCI米国株指数の相関係数 12ヵ月ローリング、月次リターン、配当込み、米ドル建て
期間:1979年12月末~2020年7月末
MSCI株価指数はNET TOTAL RETURN(USD)を使用
出所:MSCI、ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国株か?世界株か? PART2』を参照)。

 

(2020年8月7日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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