金なし、コネなし、学歴なし。中卒で現場仕事に就き、毎日を「1杯100円のうどん」でしのいだ青年の夢は、米国ドラマ『ゴシップガール』に出てくるようなセレブになることでした。極貧生活から脱却し、20代で夢を実現した著者が語る「勝つための不動産投資手法」とは? ※本記事は、株式会社ゼストエステート代表取締役の正木透次郎氏の著書『最強「レアボロ」不動産投資』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

中卒で就職…厳しい親方から教わった“人の道”

僕が中学を卒業し、初めて就いた仕事は「現場仕事」でした。当時母親が経営していたスナックの常連の一人、現場職人の親方に声をかけてもらったのです。

 

例えば大阪の道頓堀にある戎橋(えびすばし)。あの橋の改装が行われたのは、僕が17歳のときでした。橋の手すりにあたる高欄の部分はお好み焼きのコテになっていて、遊歩道から見上げた時に見える橋のパネル箇所やダウンライトのボックスはすべて、当時僕たちが手掛けたものです。

 

中卒ながらも社員として雇ってもらっていたその会社は、今思えば一風変わった職場でした。

 

親方は口が悪く、理不尽なことですぐに怒るような人でした。それからみすぼらしい恰好をした50代の職人が二人。ボロボロのアパートに住み、いつも家賃を滞納していました。そして僕を合わせた4人です。

 

景気の良い時期には彼ら職人の給料は40万円ほどあったはずなのに、なぜか給料日3日目にはすべての有り金を使い果たしてしまう、そんなろくでもないような職人たちでした。過去に何があったのかは知りませんが、二人とも全部歯がない。吸うタバコは日に日に変わっていく―(給料日にはセブンスターだったのが、月半ばにはわかばに、そして月末にはエコーへ)。僕が社会人として最初に働いたのは、そんな環境でした。

 

親方は当時の僕にとって、とにかく怖い人でした。例えば電話にワンコールで出ないだけでブチギレられる。夜中の2時でも電話に出られなかったら「おいこら、お前エラなったのぉ~」と言うような人です。

 

しかし同時に、めちゃくちゃカッコいい大人でもありました。とにかく礼儀や男としての在り方に関してとても厳しい人なのです。教えてくれるしつけにはいつも一本筋が通っていて「男とはこういうものだ、男とはこうあるべきだ」と、そんな男としての生き方を一から十まで教えてくれた人でした。縦社会や横のつながり、そういう人間関係のルールについてもみっちり教えてくれたのです。

 

社会に出ても恥ずかしくないように育ててもらった僕は、今でもその親方のことを師匠と思っています。外での酒の飲み方や人との縁を大事にすること、礼儀や不義理は絶対にしてはいけないことなど、古き良き時代の人の道について厳しく教わりました。

 

そのおかげで僕は、周りの同世代よりも早い段階で人としての常識を身に付け、成熟することができました。

 

最近になってよく考えますが、近頃「男としてこう生きたい」という理想を持つ人が少ないように感じます。「俺はこういう男になりたい」とか「自分のカッコいいと思う男はこういう男だ」とか、これだけは譲れないという理想像を持つ人が、減ってきているのかもしれません。

 

そんな時代に早くから師匠と呼べる人に出会い育ててもらえたのは、今となっては良い経験でした。残念ながらその師匠も数年前に亡くなってしまいましたが、僕は今でも毎年欠かさず墓参りに行き、手を合わせています。それほど僕に大きな影響を与えてくれた親方。師匠の存在があって今の僕があるのです。

「毎日100円うどん」の極貧生活、脱却のきっかけ

そんな親方の下で働いていた19歳の頃、リーマン・ショックの煽りをモロに受け、仕事がまったく取れなくなる時期がありました。ニートでもないのに月1程度しか仕事が入りません。当たり前のことですが、もちろん収入は不安定になります。

 

 

当時すでに嫁と子どもがいた僕は、これは何とかしなければ―という状況に陥ります。もともと大の車好きだった僕は、給料が20万円しかない頃からセルシオを乗り回すタイプの人間です。それが不景気になると、セルシオに乗っていながらガソリンスタンドで「1000円分だけガソリンを入れてください」と恥ずかしいことを言う必要に迫られました。家族で遠出をするとなるとセルシオでは燃費が悪いため、わざわざ友人にハイエースを借りる。それほど厳しい状況だったのです。

 

当時の給料は雀の涙程度。嫁と子どもの食費や生活費、すべての支払いを済ませば、僕の手元に残るのはたったの2万円でした。1日1000円を握りしめ、タバコを1箱買えば500円とちょっとしか残りません。その残金で自分のご飯代を捻出しなければなりませんでした。

 

昼飯には毎日はなまるうどんに行き、1杯100円のうどんに無料の天かすを山盛りにかけて食す。残ったお金で晩飯はカップヌードルとおにぎりを2個。余ったお釣りを貯めて、3日に一度はなまるうどんにちくわ磯部揚げをトッピングで乗せる。これが当時の僕にとって唯一のご馳走だったのです。

 

1杯100円のうどんがご馳走だった
1杯100円のうどんが唯一のご馳走だった

 

「こんな貧乏生活から抜け出したい―」

 

厳しい親方の下、毎日100円のうどんで過ごしていた極貧時代。そんな日常から脱するきっかけとなったのは、米国人気ドラマで観たセレブの世界でした。

 

友人から面白いと聞いて家で観ていた『ゴシップガール』では、セレブなニューヨークの高校生たちが、僕とは正反対の華やかな青春を送っています。なかでも僕が影響を受けたのは、ドラマの登場人物の一人、チャック・バスという大富豪の御曹司でした。彼は毎朝リムジンに乗り、シャンパン片手に両脇に女を抱えて登校します。

 

当時地元の居酒屋しか知らなかった僕は「シャンパン? そんな飲み物があるのか」と彼の生活スタイルに強い憧れを抱いたのでした。そしてドラマの設定では、彼の父親が不動産で財を成したことになっていたのです。「なるほど、不動産屋は儲かるのか―」当時の僕は素直にそう思いました。笑われるかもしれませんが、これが僕と不動産の出会いです。そしてこの出会いが後に、僕の人生を大きく変えることになります。

金なし・コネなし・学歴なしの青年が受けた「洗礼」

「チャック・バスのようなやつになりたい!!」

 

とにかく当時の状況を変えたかった僕は、意を決して不動産会社の面接に向かいます。中卒、資格なし、経験なしの経歴をひっさげて…。

 

しかし、当然の如く結果は散々でした。学歴もなくまともな社会人経験もない人間を、どこも雇おうとはしてくれません。

 

それでも僕は、何とか自分の強みやほかの人との違いをアピールできればと知恵をふりしぼり、あえて志望動機や自己PRを履歴書に書かず面接に臨んだこともありました。しかしその想いも見事に砕け散る…そんな始末です。

 

「なんで志望動機書いてへんの?」

「想いが強すぎて書ききれなかったんです。この場でお伝えしようと思って」

「書ききれへん場合はな、もう一枚書くねん」

 

自分なりに工夫を凝らして臨んでいるにもかかわらず、そう言われて傷つく僕は次第にヒートアップし、面接で喧嘩腰になることもしばしば…。ほかの会社でも同じようなやりとりを繰り返しては物の見事に不採用。

 

「僕は社会に必要とされてないのか…やっぱり現場仕事しか無理なのかな」

 

当時はひどく落ち込んだものです。しかし世の中の景気は一向に良くならず、現場の仕事も入ってこない。一応社員だったため、日当1万円×13日分が最低保障されてはいたものの、それでは生活がままなりません。

 

この状況を何とかしなければ―。

 

不動産会社の面接にすべて落ちた僕は、不動産がだめなら車はどうかと考えたのでした。その理由は単純で「昔から大の車好き」だったからです。それまで面接を受けてきた不動産会社はすべて小規模だったため、当時大証二部に上場していた某大手中古車販売の会社なんて受かるはずもないかと思いつつ、応募してみたのでした。

 

一次は40名ほどの集団面接で、全員が順番に志望動機と自己PRを喋らされます。みんなが丁寧に流暢な敬語で話すなか、当時正しい敬語すら知らなかった僕は、あえてあまり喋らないよう短い言葉でPRしました。

 

「志望動機は車が好きだからです! 自己PRは誰よりも根性があります!」

 

するとこれが功を奏したのか、奇跡的に受かることができたのです。そうして二次面接に進み、その場で出会った面接官が僕の第二の師匠となる人物でした。

 

お洒落でカッコいいスーツを身にまとい、差し出された名刺の肩書きには、本部執行役員・営業所所長…。何だか分からないけどすごそうな肩書きがいくつも並ぶ彼の姿に、当時の僕は初めてサラリーマンでカッコいいと思える人に出会ったのです。しかも、めちゃくちゃ態度がデカい―。

 

「お前、何しに来たんや」

「あ、えっと面接です」

「お前ヤンキーなんか?」

「そんなことないです」

「ヤンキーなんやろう、どうせ。ほんでなんでココおんねん」

「どういうことですか? 一次面接に受かったんです」

「うち中卒はあかんねん、お前なんでおんねん」

「え⁉ 知りませんでした」

「受かったんはたまたまや。たぶん手違いやわ」

「そうなんですか…」

「ほんでお前、そのネクタイなんや?」

 

当時の僕はネクタイの結び方すら分からない人間でした。不動産会社の面接の時はすべて母親に結んでもらっていたのですが、この日に限って母親が家にいなかったのです。だからこの日初めて、自分でネクタイを結んでみたのでした。しかもYouTubeを観ながら、一生懸命動画を真似して結んだネクタイです。

 

「YouTubeを観ながら結んだんですが…すみません、よく分かりませんでした。たぶん動きは合っていたんですけど、何か変ですか?」

「お前それ、ネクタイ裏やないか」

 

僕は映像を見ながら結んだことから、左右真逆の動きをしてしまっていたのでした。つまりネクタイの結び方が真逆になっていたのです。

 

「裏なんですね…。僕、初めて自分で結んだんです」

 

そんなやりとりを交わしていたら、少し場が和んだのでしょうか。

 

「お前おもろいな。採用や!」

 

と、想定外の回答をもらうことができたのでした。

 

「ただでもな、うち中卒は雇われへん。上にかけあって、バイトからなら雇たるわ。とりあえず車と床磨いとけ。良いと思ったら社員にしたるけど、それは様子見てからやわ」

 

バイトから―。僕は一瞬考えたのでした。今の現場仕事では最低保障が月13万円。

 

「バイトっていくらですか?」

「最低賃金850円じゃ。週休2日は絶対休ませなあかん」

 

さすがは大手の上場企業です。労働環境がしっかりしていたため、8時間しか働けない。時給850円×8時間労働。ざっと計算すれば、手取り月12万5000円。これでは生活ができません。

 

一旦家に持ち帰り、僕は真剣に悩みました。これまでの面接ではすべて不採用だったこと、今後も不安定な現場仕事を一生続けていくのは絶対に嫌であること、そして何より、暮らしを一変させたかったのです。

 

「これで人生変えなあかん」

 

意を固めた僕は、その会社で働くことに決めたのでした。しかし、その後待ち受けていたのは、地獄のような日々だったのです―。

次ページ「嫌やったらいつでも帰れよ」。その半年後…

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