中小企業にとって、政府が打ち出した「働き方改革」「ワーク・ライフ・バランス」への対応は、頭の痛い問題です。政策を順守しつつ人材を確保し、企業の業績を上げ続けるにはどうすればいいのでしょうか。「社員が好きなように働ける会社」を実現し、グループ全体で200人規模ながら、求人に年間600人近い応募が寄せられる人気企業の代表取締役が、その極意を伝授します。*本記事は株式会社鈴鹿、代表取締役瀬古恭裕氏の著作『社員が好きなように働く会社』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、再編集したものです。

「安くておいしい寿司屋」の作り方

私たちの会社では幹部社員や管理職には「責任」を求め「自由」を保証しますが、かといって一般社員を軽視しているわけではありません。むしろ、一般社員の重要性を認識し、一般社員を大事にしています。

 

この点について私は比喩として、寿司屋の経営の話をよくします。寿司屋はだいたい、店長・板前・見習い・パートで運営されています。仮にその人件費(月額)を店長60万円、板前35万円、見習い20万円、パート15万円としましょう。そして、店長1人、板前1人、見習い2人、パート2人の計6人いる寿司屋であれば、1カ月の人件費は165万円です。

 

社員の重要性について、寿司屋の経営モデルで考える。(写真はイメージです。/PIXTA)
社員の重要性について、寿司屋の経営モデルで考える。(写真はイメージです。/PIXTA)

 

もしここで、若い見習いやパートといった人材を雇わず、店長と板前クラスを1人ずつ増やし、4人の少数精鋭で運営しようとするとどうなるでしょう。1カ月の人件費は190万円にアップしてしまいます。

 

[図表1]寿司屋の経営モデル比較
[図表1]寿司屋の経営モデル比較

 

「少数精鋭」というと効率的な経営が可能になるようなイメージがありますが、実際にはレジ打ちや皿洗いといった業務もあり、それを高い人件費のスタッフが行うことで経営効率はむしろ悪化するのです(ただし、東京・銀座の一等地となると話はまた違いますが)。

 

毎月25万円の差は利益に直結しますし、あるいは質の高いネタを仕入れる原資に回し「安くておいしい」といった評判店を目指す戦略も可能になります。

 

このように、経営全体を考えた場合、組織のメンバーは技術のレベルや年齢などのバランスを考慮する必要があります。

 

そして、できれば業界や他社の平均年齢より常に5歳若いメンバーで運営するようにすべきです。そうすれば、平均賃金を下げつつ、管理職の待遇を上げ、しかも同業他社と見積り競合や利益率などで負けることがありません。

 

さらに、若い社員を指導・教育することで、先輩社員のレベルも上がるのです。私たちの会社が常に「増員」を重視し、一般社員を増やそうとしているのはこうした考えによります。

好きなように働く=「独立」も選択肢に

「好きなように働く」という中には、独立するという選択肢も含まれます。私たちの会社では実際、入社したときからいつか独立して経営者になることを目標に頑張っている社員がいます。

 

グループ会社であるスフィーダ株式会社の社長であるM君は10年以上、電気工事作業員として様々な現場に従事した後、独立したケースです。

 

しかし今後、建設業では社会保険への加入義務化や外注費支払いにおけるマイナンバー制度の導入などにより、独立のハードルがどんどん高くなっていくでしょう。そんな中でも、私たちの会社であれば、会社を活用して独立という夢をかなえることができます。

 

あるいは、私たちの会社で修行して、親の会社を継ぐということも可能です。電気工事業を営む中小企業の中には、後継者難で困っているところが少なくありません。そこで、私が一人親方から法人化し、ここまで歩んできたノウハウや技術力を伝え、一人前の経営者として育てるためのプログラム(電気工事業後継者育成プログラム)を用意しています。

 

[図表2]電気工事業後継者育成プログラムの概要
[図表2]電気工事業後継者育成プログラムの概要

 

さらに2018年からは、電気・土木系の大学生・専門学校生などに進学する後継者を対象に奨学金制度も導入しました。一定の条件を満たすと、返還不要の奨学金を支給するというものです。すでに在学中の場合、後継者でなくても利用することができます。

 

地域貢献の一環として、また電気業界の未来の発展を支えることが目的です。

「たかだか仕事じゃないか」という考え方

私は社員の前でよく「たかだか仕事じゃないか」と言っています。仕事を軽く見ているのではありません。私自身はむしろ、仕事には人一倍、情熱を傾けています。

 

ただ、「仕事はこういうものだ」とか「こうしなければならない」と堅く考えると、次第に苦痛に感じ、嫌になってきます。

 

最近、大手企業などで職場における“心の病気”が増えているというのも、背景には仕事に対する取り組み方の問題があるように思えてなりません。仕事であっても、もっとゲームを楽しむように気軽に取り組んだらいいのではないでしょうか。

 

私は「人間万事塞翁が馬」という言葉が好きです。仕事がうまくいかず苦しくなったときはいつも思い出し、「たかが仕事じゃないか」と考えます。同じように、仕事が順調に進んでいるときも「ずっとこのままというわけはない」と気を引き締めるようにしています。

 

社員に対しても同じです。社員が仕事のことで悩むのが嫌で、私たちの会社には不要だと思っています。「たかが仕事」であり、仕事とプライベートの両立で悩むくらいなら、無理に残業しなくていいし、管理職にならなくていいのです。

 

同時に、ちょっとうまく行っているからといって天狗になるのも困りものです。人生に壁はつきものであり、壁を乗り越えることで人間は成長します。

 

だから、私たちの会社では一般社員であれ管理職であれ、進歩したい、成長したいというならぜひチャレンジしてもらいたいと思っており、そのためのチャンスはいくらでも用意します。

 

その延長線で近い将来、取締役でも価値観を尊重した就任制度を導入する予定です。

 

たとえば、週に3日しか働きたくないし、年収も数百万円でいいけれど、すごい技術を持っている。そんな人に役員になってもらうのです。

 

週3日の出社でもすごい技術力の人なら会社のレベルも上がりますし、技術系社員についての評価や査定に協力してもらえればとても有意義です。

 

私たちの会社ではこのように、「価値観型人事制度」の考え方によって、自分の価値観に応じて自由に働くことを重視しています。

 

[図表3]自由と責任の関係
[図表3]自由と責任の関係

 

こう言うと、仕事がすごく楽で、甘い会社ではないかと思われるかもしれません。しかし、自分の価値観、すなわち自分なりの成功や幸福の基準がない人には、逆に大変かもしれません。自分で決めるということは、実際はそんなに楽なことではありません。

 

しかし、そこには大きなチャンスがあり、チャレンジする楽しさがあります。責任を果たせば、それに見合った自由が手に入ります。選ぶのは一人ひとりの社員です。

 

 

瀬古 恭裕

株式会社鈴鹿 代表取締役

 

社員が好きなように働く会社

社員が好きなように働く会社

瀬古 恭裕

幻冬舎メディアコンサルティング

「働き方改革」「ワークライフバランス」を20年前から実践 創業以来、増員・増収・増益を続ける組織づくりのノウハウを解説! 「終身雇用」「年功序列」など、いわゆる「日本型経営システム」は、かつての日本の大量生産大…

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