
日本語には、「損する言葉」と「得する言葉」の2種類がある。前者は幼稚で相手の配慮が不足しているイメージ、後者が知性や教養が溢れるイメージだ。「得する言葉」を使うことで、コミュニケーションが円滑になり、仕事や人生にも好影響と著者は語る。言葉遣いを変えるだけで好印象を与える「語彙」の数々を徹底解説。本連載は安田正著『超一流 できる大人の語彙力』(プレジデント社)から一部を抜粋した原稿です。
意味:後世に長く残るような優れた業績を残す
〇 杯部長は昨年、売上で金字塔を打ち建てたらしい。
× 杯部長は昨年、売上ですごい記録を出したらしい。
圧倒的なすごさの度合いが伝わるか
×の例も間違いではありません。ただ、「すごい」という言葉だけでは、「どれぐらいすごい」のか、聞く人によって受け取り方が変わってしまいます。「金字塔」は、ピラミッドを漢語訳した言葉です。誰も真似できないことを成し遂げたり、そう簡単には超えられない記録を打ちたてたりした場合に使われます。○の表現では、圧倒的な「売上のすごさ」を伝えることができます。
意味:普通から大きく外れていること。一方にかたよっていることや、その様子
〇 あの人のやり方は極端だ。
× あの人のやり方はエグい。
丁寧に伝えようとする姿勢があるか
「エグい」は、若い人を中心に使われることの多い、一種の流行語で、「きつい」「厳しい」など、さまざまな意味を持っていると考えられます。マイナスなイメージだけではなく、そこから使い方 が広がって、普通でない状態に使われることもあるようです。このような場面では「極端な」という言葉に置き換えることをお勧めします。「度が過ぎている」意味が伝わり、丁寧な印象が生まれます。

意味:あっても役に立つどころか、かえって邪魔になるもの
〇 あの機械はもう古く、無用の長物になってしまった。
× あの機械はもう古く、役立たなくなってしまった。
細かなニュアンスまで伝わるか
◯の「無用」は「いらないもののこと」を、「長物」は「長すぎて役に立たないもの」から転じて「無駄なもの」のことを意味します。役に立たないものや、邪魔なものに対して使われる常套句です。×のように伝えることでも、こちらの伝えたい内容は相手に届きますが、ぜひ○のような表現を覚えて、使える言葉を増やしてみましょう。