日本語には、「損する言葉」と「得する言葉」の2種類がある。前者は幼稚で相手の配慮が不足しているイメージ、後者が知性や教養が溢れるイメージだ。「得する言葉」を使うことで、コミュニケーションが円滑になり、仕事や人生にも好影響と著者は語る。言葉遣いを変えるだけで好印象を与える「語彙」の数々を徹底解説。本連載は安田正著『超一流 できる大人の語彙力』(プレジデント社)から一部を抜粋した原稿です。

的確に話の真髄を捉える

(1)【遠い親戚より近くの他人】
意味:いざという時に頼りになるのは、遠く離れて暮らす親類ではなくて、近所に住んでいる他人のほうだということ

 

例文:災害で困った時こそ、遠い親戚より近くの他人だ。

 

解説:当事者にならないと、あるいは本当に体験しないと人はわからないものです。言葉では本当のことはなかなか通じない、ともいえます。

 

 

(2)【泣いて馬謖(ばしょく)を斬る​】

意味:全体の規律を保つために、愛するものでもやむをえず処罰することの例え

 

例文:あのような形で部下に裏切られたら泣いて馬謖を斬るしかないか……。

 

解説:どんなに有能であっても、これは絶対にダメだということがあれば関わりを断つことも時には必要です。特に経営者はそんな経験をすることがあります。そんな断腸の思いを表しています。

 

 

(3)【ミイラ取りがミイラになる】

意味:ミイラ取りがミイラになるとは、人を連れ戻しに行った者が、その目的を果たさずに留まって帰ってこなくなること。また、人を説得しようとした者が、逆に相手に説得されてしまうことの例え。

 

例文:彼らを説得しに行って、結局自分も仲間になってしまっている、ミイラ取りがミイラになったってことだね。

 

解説:結局、自分の意見というものは、完全なものではない。人に感化されて、変わってしまうということでしょう。そうならないためには、大きな視点でそのことを議論しないと、細かいことに惑わされてしまいます。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

知的な言い回しはビジネスにぴったり

(4)【物言えば唇寒し秋の風】

意味:味方でありながら、内部から災いをもたらす者や恩を仇で返す者の例え

 

例文:先日は彼に言いすぎてしまった……。物言えば唇寒し秋の風とはこのことだ。

 

解説:松尾芭蕉の俳句で、口を開くと秋の冷たい風が唇に触れて、寒々とした気分になることから、悪口を言った後の後味の悪さを表したことわざです。なかなか難しいことですが、後悔することのないよう、人の悪口は言わないように心がけたいものです。

 

 

(5)【寄らば大樹の陰】

意味:頼るならば、権力のあるものに頼ったほうがよい。大きくて力のあるものに頼るほうが、安心できて得もするという例え

 

例文:これからの時代、寄らば大樹の陰という考え方は通用しなくなる

 

解説:震災や災害、新型コロナウイルスの感染拡大など、世の中は常に大きく揺れ動いています。これまでは大きな組織に所属していれば安泰だったのかもしれませんが、これからは自らの力で生き抜いていくことが、より重要になるはずです。

 

 

(6)【李下(りか)に冠を正さず】
意味:自分の行動は常に用心深くし、疑われるようなことをしてはならない

 

例文:李下に冠を正さず、誤解を招くような言動は慎まなければならない。

 

解説:人と人が社会で生きていく中で、〝信用〞はとても大切です。相手から信頼を得るためには、人から疑われたり嫌われたりするようなことや、誤解を生むことを避けるように心がけるとよいでしょう。

 

 

安田 正

株式会社パンネーションズ・コンサルティング・グループ代表取締役

早稲田大学グローバルエデュケーションセンター客員教授

超一流 できる大人の語彙力

超一流 できる大人の語彙力

安田 正

プレジデント社

“損する言葉"と“得する言葉"。言葉づかいの選択で残念な人生を送っていませんか? この本は、普段、あなたが使っている言葉が“損する言葉"であるか“得する言葉"であるか、ひと目で判断できる! そのような内容になっていま…

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