アルバイト、個人宅配、情報商材…功罪はいかに
ここで、問題になってくるのが「何を副業にすればいいのか?」ということです。巷のビジネス書には、「自分の好きなことを仕事にすればいい」「好きこそものの上手なれ」「自分の得意なことで起業しよう」…といった言葉が並んでいますよね? けれど多くの人が、実際は好きなことを仕事にできず、自分の得意なこともわか らないため、結局「自分にもできそうなこと」を副業に選んでいるのが実情です。
「自分にもできそうなこと」とは、主に以下の3つが挙げられます。
《巷でよく見かける3つの副業》
1、アルバイト
2、ギグワーク
3、情報商材を使った副業
これらに共通しているのは、うまくいっても短期間しか稼げないということです。
一番のアルバイトの問題点が何かというと、差別化がしづらいことです。ですから、“自分の時給”を下げることになるのはほぼ間違いありません。さらには、遠い将来まで働き続けているイメージが描きにくいことです。
アルバイトの仕事は、誰でもできるようにマニュアル化されています。つまり、これを副業に選ぶと、フリーターや学生と肩を並べることになります。
サラリーマンは通常、フルタイムの仕事を抱えており、ただでさえ自分の自由時間が少ない状態です。その貴重な時間を、誰でもできる仕事に充ててしまうというのは、あまりに惜しいことです。
次に、2のギグワークは、最近になって急速に増えてきた新しい働き方です。インターネットを介して、単発・短期の仕事を請け負う個人事業です。ギグワークと聞くと、思い浮かべるのがフードデリバリーや個人宅配でしょう。このギグワークを請け負う人たちのことを、ギグワーカーと言います。
最近、サラリーマンの副業として、この仕事が注目を集めているのは、「空き時間を有効に活用できる」「働きたい時だけ働くことができる」といった点からです。確かに、ギグワークは、時間のないサラリーマンにとって、相性がいい面はあります。
しかし、残念ながら、ギグワークも1のアルバイトと同じく「習熟による差別化がしにくい」という欠点があります。もちろん、個人宅配がダメ、ということではありませんが、より多くの注文をこなそうと思ったら、自転車を速く漕ぐか、バイクに乗り換える以外に収入アップの手段はそう多くはありません(実際、配達員が自転車で高速道路を走行したり、交通事故にあったりというニュースをよく目にするようになってきました)。
3の情報商材を使った副業も、先の1や2と同じく「隙間時間を使ってできる」という共通点があります。たとえば「家に居ながらにしてできる」と謳ったアフィリエイト(成功型報酬広告)や、「労働をしなくてもお金が増える」というFX(外国為替証拠金取引)、「簡単に小銭が稼げる」のが謳い文句のせどりやポイント稼ぎなど、ネットで「副業」と検索すれば、ありとあらゆる商材が出てきます。
3は、詐欺が多発する要注意分野です。Tさんから聞いた事例を紹介します。Tさんは、SNSを通じて知った「誰でも簡単に稼げる」というサービスに申し込みました。すると、先方から「iPadをできるだけたくさん用意してください」と指示されます。Tさんは言われた通り、複数のクレジットカードを使い、各々の限度数までiPadを購入しました。
すると、相手から「稼ぐための専用アプリを入れる必要があるので、iPadを指定の場所に持参して係の者に手渡してください」と言われます。Tさんが言われた通りにすると、途端に相手からの連絡が途絶えました。Tさんの手元には、クレジットカード会社からの多額の請求だけが残されました。
「どこかにきっと、裏技があるに違いない」という思い込みが、人の判断を狂わせてしまうのです。こうやって、巷で副業と呼ばれているものを俯瞰(ふかん)してみると、サラリーマンの副業のカギは、「投入時間」と「時間単価」だということがわかるのではないかと思います。
俣野 成敏
ビジネス書著者
投資家
ビジネスオーナー