産後の夫婦関係はその先何十年を左右する。日本では「産後うつ」になる女性が30%を超えるが、男性のサポートが得られなかったことも大きな原因だろう。産婦人科院長を務める著者が、夫婦で仲良く過ごすための男性からの働きかけのヒントを伝授する。本連載は、東野産婦人科院長の東野純彦氏の著書『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎MC)から一部を抜粋した原稿です。
ただ「話を聞いてほしい」だけなのに…
しかし、この一言が〝地雷〟でした。
「不満? 私はこれだけ頑張ってるのに、愚痴の一つも言っちゃいけないの?」
「そんなこと言ってないじゃないか」
「だいたいあなたは、いつも私の話をちゃんと聞いてくれない」
「聞いてるよ! 聞いてるから解決できるようにいろいろと提案しているんじゃないか」
「それが聞いてないって言ってるの!」
「もう、わけが分からないよ!」
口論は続き、時間だけが過ぎていきます。こうなるともう勇樹さんは涼子さんの怒りが静まるまで待つしかありません。
いったい何がいけなかったのか。涼子さんの本音は「ただ話を聞いてほしい」それだけでした。
だから勇樹さんが解決策を提案したり、「そんなに気にすることじゃないよ」と軽く受け流したりすることに対し「この人は私の話を聞いてくれない」と悲観してしまったのです。
「それなら最初からそう言ってくれればいいじゃないか」
男性ならそう思うかもしれません。
しかし女性は「察してほしい」「話を聞いてほしい」生き物で、解決策やアドバイスは求めてはいません。ただただ黙って話を聞いてあげるのが、ここでは正解なのです。
東野 純彦
東野産婦人科院長
東野産婦人科院長
東野産婦人科院長
1983年久留米大学医学部卒業後、九州大学産婦人科教室入局。1990年国立福岡中央病院に勤務後、東野産婦人科副院長に就任。その後、麻酔科新生児科研修を行う。1995年同院長に就任。東野産婦人科では“女性の一生に寄り添う。これまでも、これからもずっと。"をテーマに、妊娠・出産・育児にかかわらず、思春期から熟年期、老年期まで女性の生涯にわたるトータルケアを目指す。お産については家庭出産と医療施設の安全管理の長所を活かした自然分娩を提唱。フリースタイル分娩、アクティブバースの推進など、母親の希望の出産に合わせてサポートしている。また、赤ちゃんとの関わり方が分からない父親のための「赤ちゃんサロン~パパ&ベビークラス」や、育児における父親の役割を学ぶための「父親教室」なども開催。子育てに取り組む夫婦にしっかり寄り添うクリニックとして定評がある。
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連載「産後クライシス」…冷え切った夫婦仲を修復する処方箋