「家事」を「仕事」に置き換えてみると…
夫婦は、二人三脚でこれからの道のりをゴールに向かって歩んでいくことで絆が強くなります。二人三脚は、どちらかが「もっと速く走れないのか」とか「こっちに合わせてくれないと困る」と身勝手な言動を取っていたら、やがて転んでしまいます。二人同時に進める、ちょうど良い歩幅とリズムを探り合ってこそ「夫婦」なのです。
ここでとある家庭をのぞいてみましょう。
育児休暇を終えた美奈子さん。1歳になった子どもを保育園に預け、いよいよ職場復帰です。しかし出社して早々に「お子さんが発熱したので迎えに来てください」と電話がかかってきました。職場の仲間に頭を下げ、子どもを迎えに行き、その足で小児科へ。診断はただの風邪でしたが、熱が引くまで会社には行けないので、その旨を上司に連絡しなければなりません。
風邪をひいて機嫌の悪い子どもの面倒を見ながら食事の用意をし、ごはんを食べさせ、薬を飲ませ、なんとか寝かしつけることに成功。ところが会社から帰宅した夫の足音で、子どもはまた目を覚ましてしまいました。美奈子さんは「ようやく寝たところだったのに!」と思う気持ちをこらえ、再び寝かしつける。
ひと息つく間もなく夫の食事の準備をし、さあ、持ち帰った仕事を片付けようと思った矢先に、再び子どもが起きてしまう……。そうして気づけば朝を迎えてしまいました。また、育児に家事にと追われる1日が始まります。
まるで母子家庭なのかと言いたくなるほど、父親の存在が見えません。しかし、多くの家庭がまさにこのような状態なのです。客観的に見ると「なんだか母親ばかりが大変そうだな」と思うのですが、男性にとっては普通に生活をしているつもりなので、この状況に気づくことはなかなかできません。
そしてようやく美奈子さんが「せめて家事をいくつか分担したい」とヘルプを出すと、夫はこんなことを言うのです。
「自分は残業で早く帰ることはできないから、実家のお母さんに来てもらったら?」
「今は便利な家電がたくさんあるから、そういうのに頼ったら?」
「ごはんは手抜きでも良いからさ」
「最近は病児保育とかもあるんでしょ? そういうサービスに頼るのも良いんじゃない?」
この態度に美奈子さんは落胆します。「この人なんにも分かってない……」彼女が頼りたいのは、外部の何かではなく今目の前にいる夫なのです。
仕事でとあるプロジェクトを進めているときに、チームの一人が「キャパオーバーで倒れそう」「仕事が追いつかないから助けてほしい」と言ってきたら「僕はこっちをやるから、君はその作業に集中して」と声をかけ、なんとかプロジェクトを成功させるための策を練り、力を合わせます。「僕は別の仕事で忙しいから、別の部署の人に声をかけて」なんて言わないでしょう。
つまり夫婦は「子育て」というビッグプロジェクトを一緒に進めていくチームなのです。だからもしもチームの一人がヘルプを出したとしたら、助け合うのが当たり前なのです。さもなければ二人三脚の形は容易に崩れ、前に進むことができなくなってしまいます。