産後の夫婦関係はその先何十年を左右する。日本では「産後うつ」になる女性が30%を超えるが、男性のサポートが得られなかったことも大きな原因だろう。産婦人科院長を務める著者が、夫婦で仲良く過ごすための男性からの働きかけのヒントを伝授する。本連載は、東野産婦人科院長の東野純彦氏の著書『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎MC)から一部を抜粋した原稿です。

「家事」を「仕事」に置き換えてみると…

夫婦は、二人三脚でこれからの道のりをゴールに向かって歩んでいくことで絆が強くなります。二人三脚は、どちらかが「もっと速く走れないのか」とか「こっちに合わせてくれないと困る」と身勝手な言動を取っていたら、やがて転んでしまいます。二人同時に進める、ちょうど良い歩幅とリズムを探り合ってこそ「夫婦」なのです。

 

ここでとある家庭をのぞいてみましょう。

 

育児休暇を終えた美奈子さん。1歳になった子どもを保育園に預け、いよいよ職場復帰です。しかし出社して早々に「お子さんが発熱したので迎えに来てください」と電話がかかってきました。職場の仲間に頭を下げ、子どもを迎えに行き、その足で小児科へ。診断はただの風邪でしたが、熱が引くまで会社には行けないので、その旨を上司に連絡しなければなりません。

 

子どもが発熱したと保育園から電話が… (画像はイメージです/PIXTA)
子どもが発熱したと保育園から電話が…
(画像はイメージです/PIXTA)

 

風邪をひいて機嫌の悪い子どもの面倒を見ながら食事の用意をし、ごはんを食べさせ、薬を飲ませ、なんとか寝かしつけることに成功。ところが会社から帰宅した夫の足音で、子どもはまた目を覚ましてしまいました。美奈子さんは「ようやく寝たところだったのに!」と思う気持ちをこらえ、再び寝かしつける。

 

ひと息つく間もなく夫の食事の準備をし、さあ、持ち帰った仕事を片付けようと思った矢先に、再び子どもが起きてしまう……。そうして気づけば朝を迎えてしまいました。また、育児に家事にと追われる1日が始まります。

 

まるで母子家庭なのかと言いたくなるほど、父親の存在が見えません。しかし、多くの家庭がまさにこのような状態なのです。客観的に見ると「なんだか母親ばかりが大変そうだな」と思うのですが、男性にとっては普通に生活をしているつもりなので、この状況に気づくことはなかなかできません。

 

そしてようやく美奈子さんが「せめて家事をいくつか分担したい」とヘルプを出すと、夫はこんなことを言うのです。

 

「自分は残業で早く帰ることはできないから、実家のお母さんに来てもらったら?」

「今は便利な家電がたくさんあるから、そういうのに頼ったら?」

「ごはんは手抜きでも良いからさ」

「最近は病児保育とかもあるんでしょ? そういうサービスに頼るのも良いんじゃない?」

 

この態度に美奈子さんは落胆します。「この人なんにも分かってない……」彼女が頼りたいのは、外部の何かではなく今目の前にいる夫なのです。

 

仕事でとあるプロジェクトを進めているときに、チームの一人が「キャパオーバーで倒れそう」「仕事が追いつかないから助けてほしい」と言ってきたら「僕はこっちをやるから、君はその作業に集中して」と声をかけ、なんとかプロジェクトを成功させるための策を練り、力を合わせます。「僕は別の仕事で忙しいから、別の部署の人に声をかけて」なんて言わないでしょう。

 

つまり夫婦は「子育て」というビッグプロジェクトを一緒に進めていくチームなのです。だからもしもチームの一人がヘルプを出したとしたら、助け合うのが当たり前なのです。さもなければ二人三脚の形は容易に崩れ、前に進むことができなくなってしまいます。

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