産後の夫婦関係はその先何十年を左右する。日本では「産後うつ」になる女性が30%を超えるが、男性のサポートが得られなかったことも大きな原因だろう。産婦人科院長を務める著者が、夫婦で仲良く過ごすための男性からの働きかけのヒントを伝授する。本連載は、東野産婦人科院長の東野純彦氏の著書『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎MC)から一部を抜粋した原稿です。

頑張っても子どもに「ママが良い」と言われてしまう夫

職場では上司に気を使い、家に帰れば妻の機嫌をうかがう。

 

本来、夫にとって自宅はリラックスできる場所であってほしいものですが、今や「男も家事をして当たり前」の時代となりました。

 

男性は家庭を大切にし、家事や育児も頑張らなくてはいけない。しかし労働時間は変わらない。そうして会社と家庭の要望すべてに応えようとし、どんどん追い詰められてうつ状態になるのです。

 

妻の出産後、うつ状態に陥った方の話を聞いたことがあります。

 

【谷口さん夫婦の例】

 

2歳になる男の子がいる谷口さん夫妻には、昨年、二人目の女の子が生まれました。妻が出産で入院している間に、長男の面倒を見ていたのは夫である博之さんです。

 

生まれて初めて母親のいない生活に、長男は夜になると「ママが良い。ママに会いたい」と泣きじゃくります。博之さんは辛抱強く、毎晩泣き止むまで息子を一生懸命寝かしつけていました。そしてようやく妻が退院するとき、長男は病室に着いた瞬間に「ママー!」と妻の愛子さんに駆け寄っていったのです。

 

ママが恋しかったのはもちろん分かる。ただ、博之さんは「あれだけ頑張ったのに……。自分はいったいなんなんだろう」と無力感に包まれたといいます。それを機にどんどん子育てに対する自信をなくし、産まれたばかりの娘にもどう接して良いのか分からなくなってしまいました。

 

そうはいっても、小さい子ども二人を相手に奮闘する妻を放っておくわけにはいかないので、毎日18時までに仕事を終えて、急いで家に帰り、妻を助けていました。残った仕事は子どもたちが寝静まったあとに自宅で片付けます。

 

そうこうしているうちに睡眠不足が続き、集中力はみるみる低下。顔色は悪くなり、仕事でのミスも増え始め、博之さんを心配した同僚のすすめでメンタルクリニックを受診してみると「うつ」と診断されたのです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

同僚や上司から理解を得て、数カ月休職したあと、無事に復職できたのは幸いでした。

次ページ妻に「この子のこと愛してないの?」と非難される夫

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    東野 純彦

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