産後の夫婦関係はその先何十年を左右する。日本では「産後うつ」になる女性が30%を超えるが、男性のサポートが得られなかったことも大きな原因だろう。産婦人科院長を務める著者が、夫婦で仲良く過ごすための男性からの働きかけのヒントを伝授する。本連載は、東野産婦人科院長の東野純彦氏の著書『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎MC)から一部を抜粋した原稿です。

夫の役割は「母親の精神的健康を保つこと」

育児が大変なのは子どもが赤ちゃんの時期だけではありません。2~3歳頃になると、子どもには強い自我が芽生え出します。つまり親がどんなに言い聞かせても、子育てが思うようにいかない時期がやってくるのです。

 

この時期の子どものタイプは、大きく次の三つに分かれるといわれています。

 

・あまり手がかからない子ども……40%

・普通の子ども……35%

・手のかかる子ども……25%

 

実に、4人に一人くらいの割合で「手のかかる子ども」がいるのです。

 

例えば、家で積み木遊びをする子どもに向かって「〇〇ちゃん、お買い物に行くから準備して」と声をかけたとします。手のかからないタイプの子どもは「はーい」と言って自分で玄関まで行き、靴を履いて「準備できたから、ママ行くよー」と言います。

 

ところが手のかかる子どもは、母親がどんなに「〇〇ちゃん、お出かけするよ」と声をかけても、まったく動きません。ほかの遊びに夢中になって聞こえていないのです。

 

次第にイライラし始めた母親は「お出かけするから早く!」と声が大きくなります。それでも動きません。堪忍袋の緒が切れてしまった母親は、ついに声を荒げ「お出かけするって言ってるでしょ!」と、半ば無理やりにその子の手をつかみ、靴を履かせ、引きずるように連れ出します。

 

手のかからない子とかかる子に、能力の差があるわけではありません。手のかからない子は、母親が喜ぶことを直感的に分かっているのです。逆にとらえると、怒られることを恐れているともいえます。

 

手のかからない子に分類されるのは、圧倒的に女の子が多いといわれます。脳の仕組みなのか遺伝子なのか、具体的なことは分かりませんが、クリニックに来院する母親に聞いてみても、やはり「女の子のほうが育てやすい」という声をよく聞きます。

 

反対に、手のかかる子は母親がどんなに声をかけても聞こえていません。もしかすると、そうすることで「行きたくない」という意思を伝えているのかもしれませんから、ある意味正直な子どもといえます。

 

どちらのタイプが良いとはいえませんが、手のかかるタイプの子を育てる母親のほうが圧倒的にストレスを感じているのは確かです。

 

「何回言えば分かるの!」

「買わないって言ってるでしょ!」

「いい加減にしなさい!」

 

デパートなどで、人目もはばからずこのように怒鳴りつけている母親を見かけることがあります。思わず二度見してしまう光景ですが、興味深いことに、父親が子どもを怒鳴りつける姿はあまり見かけません。

 

実は先に挙げた子どものタイプのパーセンテージは、母親たちから聞いた話をもとに割り出した数字なのです。父親に「自分の子どもはどのタイプでしょうか」と聞くと、ほとんどの人が「わが子は育てやすい良い子だ」と答えます。ここから何が分かるかといえばいかに子育ての負担が母親にのしかかっているかということです。

 

子どもが幼児期の間の男性の主な役割はシンプル。「母親の精神的健康を保つこと」です。「父親として子どものためにできることは何か」を考えるのは、子どもが小学校高学年や中学生ぐらいになってからで十分。

 

まずは「母親が心身ともにリラックスできる環境」をつくることが、夫として、父親としての役割です。母親がいつも機嫌よく笑顔でいる家庭は、明るさに満ち溢れています。その環境で育つ子どもも、両親と同じように毎日笑顔で過ごすことができます。そんな温かい家庭をつくるためにも、夫の役割は非常に重要なのです。

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