ゴミ出し当番を渋る夫に、しびれを切らす妻
【悟と奈々子の事例】
夜、職場から帰ってきた悟さんは、帰るなりソファに倒れ込み「ああ、やばい。頭が割れそうだ」と言っています。奈々子さんは心配し、体温計を持ってきました。熱を測ってみると 37 度3分。微熱があるようです。
「やっぱりなあ。朝から身体がだるかったんだよ。ああ、しんどい。今日はもうこのまま
寝ようかな」
と弱気な発言をしています。しかし奈々子さんは少し驚いたように言いました。
「え、でも 37 度くらいなら身体は動くよね。今日ゴミ出しの日なんだけど」
「ああ、ゴミ出しね」
「うん、ゴミ出しはあなたの当番でしょう。遅くなったら間に合わないから今のうちに出
してきて」
「ああ~」
しかし、悟さんは返事をしたきりソファに寝転がったまま。
「ちょっと!」
「ああ、うん」
「ああ、うんじゃなくて、ゴミを出してきてよ」
奈々子さんの声色は明らかに怒っています。それでも悟さんは大げさにため息をつき、
「分かってるよ。今ちょっと休んでるんだ。病気のときくらいもっと優しくしてくれよ」と、ふてくされてしまいました。
「病気って、ただの微熱でしょ?私なんてちょっとくらいの熱じゃそんなの顔にも出さずに、仕事も家事もしてるんだから!」
「いや、俺、おまえに『体調が悪くても働け』なんて言ったことある?きつかったら休んだら良いじゃん」
「私が休んだらこの子の面倒は誰が見るの?家の片付けは誰がするの?あなたの洗濯物は?」
次第に奈々子さんの声は大きくなります。悟さんは頭をかきむしりながら叫びました。
「ああ、もう分かったから! そんなにキイキイ怒鳴らないでくれ!頭に響くんだって!」
「なんでそんな言い方しかできないの?信じられない!あなたは良いよね。子どもが生まれても今までどおり好きな仕事ができて、家に帰ればごはんがあって、洗濯物はきれいに畳まれていて、子どもと好きなときだけ触れ合ってれば良いんだから」
何か言い返すたびに奈々子さんのボルテージは高まっているようです。悟さんは頭が痛くて休んでいるだけなのに、なぜここまで責められているのかが理解できません。たまたま虫の居所が悪く八つ当たりされただけのような気がして、不愉快な気分です。
(体調が優れないときくらい優しくしてくれたって良いじゃないか。付き合っていたころや、新婚当初はあんなに大事にしてくれたのに……)