30〜40歳代にとっての「持ち家リスク」とは?
現役世代の中でもマイホーム志向が強い30〜40歳代でいえば、恒常的な支出の代表として教育費が挙げられます。
文部科学省の試算によれば、子どもに掛かる教育費は、幼稚園から高校まで公立で大学は国立というケースで約1000万円、幼稚園から大学まで全て私立というケースで約2300万円と言います。マイホーム1軒分とは言わないまでも、1000万円単位の多額のお金が掛かるわけです。
問題は、そのお金の掛かり方です。年間の教育費は一般的には、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、という順で上がっていきます。したがって30代前半で子どもを持つと、50代前後の時期に教育費支出のピークを迎えます。
文科省では子ども二人の世帯を想定し、可処分所得と教育費支出が親の年齢が上がるに従ってどのように推移するか、試算しています。やや古い10年ほど前のデータを用いたものですが、大まかな傾向を理解するのに参考になるのでご紹介します(図表1)。
この試算では、親は31歳で第一子を33歳で第二子を持ち、子どもは二人とも、幼稚園は私立、小学校から高校までは公立、大学は私立に通う前提です。
試算結果によると、第一子が高校を卒業するまでは、年間の教育費支出は可処分所得の2割程度に抑えられています。ところが第一子が大学に入ると、教育費支出はぐんと跳ね上がります。この時、第二子は高校生です。そして第二子が大学に入ると、教育費支出はさらに跳ね上がり、ピーク時には可処分所得の半分を超えてしまいます。これは、二人の子どもがともに大学在学中の2年間に限られるとはいえ、かなりの負担です。
この時、親の年齢は50歳代前半。仕事上、何らかの転機が訪れている可能性も考えられます。自身の親が医療や介護の面で子を頼ることになる可能性の高まる時期とも重なります。子どもの教育だけでなく、仕事のこと、親のこと、課題は山積みという年代です。
貯蓄という備えが十分にあれば、家計面では余裕を持てますが、若いころの貯蓄はマイホームの購入時に使い果たしているとなると、そうはいきません。マイホームを購入した後も貯蓄を続けることを念頭に置いて資金計画を立てていたならいいのですが、もしそうでないなら、毎月のローン返済に追われて貯蓄どころではないでしょう。
そうした状況で50代を迎えたとき、この教育費支出のピークをうまく乗り越えられるのか、非常に心もとない限りです。
そこに追い討ちを掛けかねないのが、金利の上昇です。30歳代でマイホームを購入し、子どもを持つようになったと考えると、50歳代を迎えるのは20年後。変動金利の水準はここ10年ほとんど変わっていないものの、さすがに20年後までは分かりません。金利の上昇でローン返済の負担が増えれば、負担増が重なります。
50歳代といえば、自身の老後のこともそろそろ考えなくてはなりません。リタイヤ後の生活をどう組み立てていくのか。年金収入ばかりをあてにはできませんから、生活水準を落とさないようにするなら、それなりの老後資金が必要です。
別の観点から注意したいのは、共働きのご夫婦です。二人とも収入があり、それを前提に住宅ローンを組めますから、一人分の年収を前提にした場合より大きな額を借り入れることが可能です。一世帯に働く人=稼ぐ人が二人いる「二馬力」と言われる状態です。問題は、その「二馬力」の状態をいつまで続けられるのかという点です。
マイホーム購入後も、ご夫婦ともにそれまでと同じように働き続けていれば、何も問題はありません。しかし、奥様が出産を機に会社を辞めるような事態になってしまったら、一大事です。「二馬力」が「一馬力」になってしまう恐れがあるわけです。単純に考えて収入は半減。それでも、住宅ローンの返済負担は半分にはなりません。