30年を超える歴史を持つスリランカのコロンボ証券取引所。取引所のさらなる発展を目指すために、リスク評価に基づいた適切な自己資本比率を証券会社に求める規制が導入されようとしています。取引所トップに今後の改革の方向性についてインタビューした記事を全6回でお伝えします。

リスク軽減と流動性向上に意欲を示す証券取引所

スリランカのコロンボ証券取引所は、市場のさらなる健全化と発展を推し進めるために、証券会社に対する新たな自己資本規制を数ヶ月以内に導入する予定だ。それに加えて2017年初頭には、取引リスクを減少させる決済システムを導入する予定でもある。コロンボ証券取引所は、これらの取り組みによって、市場の流動性や取引所のステータスを改善することを目指している。

 

コロンボ証券取引所が予定する、リスクに基づいた自己資本規制が導入されると、証券会社はさまざまな業務分野において影響を受けるだろう。証券会社がリスクをより上手に取り扱いつつ、資本を積み立てておくことで、市場での取引はより安全になる。このリスクベースの自己資本規制は、早ければ今後3ヶ月で導入されるだろう。

 

もう一つのリスク低減に向けた取り組みは、2017年第1四半期に導入を目指す、DVP決済*システムである。現行の決済システムでは、取引後、株式は即座に引き渡される一方で、支払いを受けとるのは3日後になってしまう。これをDVP決済にすることで、現金と株式が同時に取引できるようになり、支払い義務の不履行というリスクが軽減される。

 

コロンボ証券取引所のCEOラジーバ・バンダラナイケ氏は、これらの取り組みによって、市場の流動性を高め、新規上場をひきつけて、コロンボ証券取引所の格付けをあげることができると考えている。

 

以下、バンダラナイケ氏によるインタビュー記事を掲載する。

世界基準の自己資本規制比率(CAR)を導入へ

――なぜ自己資本規制を導入するのでしょうか?

 

現在、取引量の多寡にかかわらす、証券会社は3,500万スリランカ・ルピー以上の自己資本が求められていますが、これは引き継がれます。当然ながら、純資本の額は経営する中で保有資産に基づいて調節されていきますが、それでは証券会社がもつべき準資本を規定する方法として効率的ではありません。一方で、有価証券を取引する際に証券会社が持つべき流動資産の適切な水準を明確に示した自己資本規制比率(CAR)は世界的に使用される基準であり、証券監督者国際機構(IOSCO)によって推奨されているものです。

 

定められる最小の自己資本規制比率(CAR)は1.2倍であり、これは固定化されていない自己資本の額をリスク相当額で割ることによって算出されます。固定化されていない自己資本とは、証券会社が投下した資本(株主資本、長期借入金、社債など)と、延滞している顧客債権を含むすべての固定的な資産を自己資本から差し引いたものです。

 

固定的な資産は、証券会社の自己資本を計算する上では、現在でも控除されますが、新たな自己資本規制比率のルールではこれがより厳格化されます。バリュー・アット・リスク(VaR)によって調整された債権評価を用いた新しいルールを用いることによって、証券会社が保有する流動資産額は、より明確になります。

 

*DVP決済

Delivery Versus Paymentの略。証券の取引において、相手方の債務不履行のリスクをなくすため、引渡し(Delivery)と支払い(Payment)のうち、一方が行われない限り他方も行われないようにすること。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2016年3月に掲載した記事「RISK-BASED BROKER CAPITAL IN THREE MONTHS, DVP IN A YEAR」を、翻訳・編集したものです。

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