買い手が「不当に優位」な状況を改善へ
――Delivery Versus Payment (DVP決済)が、まもなく導入されます。これによって、カウンターパーティー・リスクが減少したり、変化したりしますか?
引渡し(Delivery)と支払い(Payment)のうち、一方が行われない限り他方も行われないようにするDVP決済は、2017年の第一四半期に導入されます。現在、DVP決済の導入のための準備が2方面で進んでいます。証券取引委員会法の改正と関連法案の制定です。証券取引委員会は法案の今年中の通過に自信を示しています。それが通れば、法制面での準備は十分です。
もうひとつのシステムの構築については、証券会社のバック・オフィス・システムの改善に着手しています。コロンボ証券取引所に関しては、クリーニング・システムとリスク・マネージメント・システムの導入を始めており、そのための子会社設立を準備しています。
現在の取引では、株式は瞬時に買い手に移動する一方、売り手への支払いは保証もなく3日後に行われるため、買い手側が不当に優位になっています。そのため、売り手はカウンター・パーティリスクに曝されており、加えてなんの対策もとれませんでした。ここに、株式と支払いが同時に行われるDVP決済を導入する意味があるのです。
金融商品取引清算機関(CCP)で決済リスクを軽減
またDVPを可能にするために、リスク管理手段として、セントラル・カウンターパーティ・システム(CCP)も導入します。金融商品取引清算機関と呼ばれる仲介組織が売り手と買い手の仲立をして、買い手に対しては株式を保証し、売り手には代金を保証します。現行のシステムには大きな瑕疵があり、取引には重大な決済リスクが存在しているのです。
セントラル・カウンターパーティ・システムの下では、清算機関は銀行融資と自己資金に加えて、決済証拠金を用いて清算を行います。当初では、清算機関はコロンボ証券取引所によって所有されることになりますが、規制当局は将来的にいくつかの機関に売却したいと考えているようです。
自己資本規制比率(CAR)におけるカウンターパーティ・リスクは、証券会社の顧客債権です。どうしてもそのリスクは残ります。証券会社間での決済については、セントラル・カウンターパーティ・システムで議論しており、証券会社の顧客からの債権回収や、顧客の支払いの有無に関わらず株式を決済しなければならない問題は、次の課題になります。
DVP決済が導入されると、代替的取引システム(ATS)とクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は切り離されます。そのため、証券会社のバックオフィス・システムとリスク管理システムの構築が現在進められています。このシステム下ではCDSに組み込まれていない株式を空売りすることができ、証券会社は積極的にショート・ポジションをとることになるでしょう。ショート・ポジションをとると、その日中に取引を履行しなければなりません。それができない場合は取引所が代替し、証券会社はそれをプレミアを付けて買戻さなければいけなくなります。これは証券会社の不履行に対するペナルティです。
このような1日で決済する空売りは、現在のところ行うことはできません。制限された空売りはまた別の問題です。一般的な空売りを可能にするために、さらに規制当局と話をする必要があります。