人気金融商品の落とし穴~仕組み債
■ハイリスク・ローリターン
仕組み債とは、特殊な仕組みによって設計された債券で、スワップやオプションなどのデリバティブ金融派生商品を利用して、複雑なキャッシュフローを生み出しています。購入する投資家や販売する発行者によって自由に設定できる点が特徴の金融商品です。仕組みの対象は、日経平均や個別株式、NYダウ、米国個別株式、米ドル、豪ドルなど、多種多様です。
例えば次のような、日経平均を元にした仕組み債があったとしましょう。日経平均がある一定の範囲内にあるならば年利3%の利息がもらえ、一定の範囲から5%を超えた水準にまで上がると早期償還されます。また、一定の範囲から70%以下の水準まで下がったら「ノックイン」といって、その低下した水準にて資金が戻ってくるよう、「仕組み」を設定します。
つまり、もし仮に大きく日経平均が下がってしまったらノックイン。損失を抱えることになってしまいます。そのようなリスクの割に、一定の範囲内に入っていたとしても利率は小さく、リターンは控えめ。一定以上にまで上昇して早期償還されると利率はほんの少しです。まさにハイリスクでローリターンな金融商品といえます。
■よりハイリスクな仕組み債も
利息を高めるために変動の激しい株式を入れる仕組み債もあります。3銘柄など複数に設定するとより利率を高めることができますが、3銘柄のうち一つでもノックインしたら、いちばん下がった銘柄で償還されるというルールが設けられていたりと、仕組みが複雑かつリスクが大き過ぎます。
ブラジルレアルを使った仕組み債も数年前によく販売されていました。1レアルが45円くらいの時代に販売されていたものが多く、33円を下回らなければ元本で償還される、といったような仕組みでした。当初の利率は9%で、38円を下回ると利率が0.1%になるというものを実際に見たことがあります。
2020年初め時点で1レアル26円となっており、ブラジルレアルの仕組み債は大損害です。なかにはその仕組み債にレバレッジをかけて、利率を倍にする代わりにリスクも倍になるようなものまで登場していました。実際にそのレバレッジ付き仕組み債を買い、1000万円の元本が200万円前後になってしまった人を知っています。
販売員も投資家もまさかこんなに下がるとは思っていなかったのでしょうが、多くの仕組み債が当初は好成績を出せていても、最後はノックインして損失を抱えるのが常となっています。
※本記事は書籍『株オタクの現役IFAが指南!本当に儲かる「株」講座』を抜粋したものです。
同連載
【有料】〈銘柄公開〉元証券マンが見極めた…将来有望株の「時価総額」
原田 茂行
IFA/自由が丘財産コンサルタンツ合同事務所代表/一般社団法人シニアウェルスライフ協会代表理事