年単位で、水晶体の濁りが「濃く・広く」なっていく
体の各臓器や組織の変化は、加齢だけが理由であれば、緩やかに何年もかけてゆっくり進んでいきます。
水晶体も、例外はありますが、基本は年単位で徐々に濁りが濃くなります。また濁りの範囲も少しずつ広がって、やがて全体的に白くなっていきます。
こうした変化は〝一方通行〟、つまり、ひとたび変化してしまうと、後戻りはしません。濁ってしまった部分が、再び若いときのように透明になるということはない、ということです。医学的には「進行性」「不可逆性」といいます。
ただし進行性とはいえ進み方はゆっくり。そのため見え方に慣れてしまいやすい傾向が白内障の患者さんにはよくあります。自分では見えているつもりでいても、5年前、10年前と比べたら格段に見えなくなっている、それが白内障の怖さなのです。
「加齢以外の原因」で起こる白内障もある
白内障の最も大きな要因は加齢ですが、若ければかからないのかといえば、そのようなことはありません。数は少ないものの、加齢以外の要因で起こる白内障もあるのです。
代表的なものに怪我(外傷)があります。野球やバドミントンなどのスポーツ時にボールや用具が眼球を直撃したり、勢いよく転んで目を打ったりなどで、水晶体に急激な強いダメージが及ぶと、それが原因でタンパク質の変性が進んでしまうことがあるのです。それがその時すぐに起こるのではなく、10代のときの外傷が原因で40代のときに白内障になるというくらいの時間間隔です。
もう一つ、アトピー体質も白内障のリスクが高いとされています。アトピーの患者さんはもともと炎症を起こしやすく組織が弱い傾向にあります。そうした体質に加え、目がかゆくなったときに、こすったり叩いたりすることで水晶体を傷め、白内障へと進行してしまうことがあります。また、治療で用いるステロイド剤が、白内障の発症に影響するとの指摘もあります。
なお、ぶどう膜炎という眼の感染症にかかると、眼内に炎症を起こし、さまざまな合併症を引き起こします。白内障もその一つで、ぶどう膜炎併発白内障と呼ばれます。
これらの白内障は年齢に関係なく、若くてもかかるので要注意です。
川原 周平
医療法人 iMEDICAL 川原眼科 理事長
眼科専門医