白内障とは、加齢によって目の中でカメラのレンズのような役割を担う水晶体が白く濁り、視力が低下する病気です。60代で約半数、80代に至ってはほぼ全員が、程度の差こそあれ白内障にかかります。高齢化に伴い、今や「目の国民病」と言っても過言ではないこの病気について、眼科専門医が症状と治療法を平易に解説します。※本記事は『図解 白内障かなと思ったら読む本』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

眼球の直径は約2.4㎝、ほとんど個人差がない!

ぱっちりした目、切れ長な目、目の大きさや形は人それぞれですが、実は眼球そのものは直径約2.4㎝の球形で、個人差はほとんどありません。

 

一般に黒目と呼ばれる部分は、真ん中が最も黒く、その周囲はやや茶色になっています。その中心部を瞳孔といい、周辺を虹彩といいます。

 

眼球は強膜という1~1.5㎜程度の白色の壁で構成されていますが、黒目の部分はやや薄くなり、0.5㎜ほどの角膜でできています。0.5㎜でも十分薄い、と思われるかもしれませんが、眼の組織の中では厚みのある、丈夫な膜です。

 

その角膜の奥に、水晶体があります。なお、水晶体はチン小帯という、毛様体から出ている小さな糸のような組織で、全周を吊られるように支えられています。

 

眼球の内側には網膜という膜が張られ、その中の視神経線維が集まって束となり脳へとつながっています。眼球の中は硝子体というゼリー状の物質で満たされており、眼の形を保っています。

 

[図表1]眼の構造

カメラ機能に例えられる「ものが見えるしくみ」

ものを見るしくみは、カメラの機能にたとえて説明することができます。

 

外から入ってきた光はまず角膜を通ったあと、瞳孔を通り抜けます。瞳孔はカメラでいう絞りにあたり、目の中に入る光の量が調節されます。まぶしいときには瞳孔が小さくなり、逆に暗いところでは瞳孔が大きくなります。

 

光は瞳孔から、レンズの役割を果たす水晶体に届きます。毛様体の働きでチン小帯が伸び縮みし、水晶体の厚みを変えピントを合わせます。

 

こうして外から入ってきた光は水晶体を通ったあとに屈折し、網膜上に像を結びます。網膜はフィルムのような役割を果たしているといえます。

 

それを視神経が感知し電気信号化して、脳に情報を送ります。それにより私たちは見えたものを認識するのです。眼の組織はどれもとても小さいものですが、どれか一つでも不具合が生じると、見え方が悪くなってしまいます。白内障はその中でも、レンズに当たる水晶体の不具合が原因となって起こるというわけです。

 

[図表2]ものが見えるしくみ

虫めがねのレンズと同じような形の「水晶体」

ここで白内障を知るうえでおさえておきたい、水晶体の働きについて説明します。

 

水晶体は直径9㎜、厚みは中心部で4㎜程で、虫めがねのレンズと同じような形をしています。主成分はタンパク質で、健康な状態ではほぼ透明です。

 

水晶体の中心には核というやや硬い構造があり、外側は皮質と呼ばれる2つの構造から成り立っています。また、全体が囊と呼ばれる薄い膜で包まれています。

 

水晶体はカメラのレンズに相当すると言いました。でも、機械のカメラとは決定的な違いがあります。それは、「厚みを自分で変えられる」ということです。

 

カメラのレンズは分厚くなったり薄く伸びたりはしませんが、人の眼の水晶体は、支えとなっているチン小帯が伸び縮みすることで、厚みが変わるのです。近くを見るときには水晶体が厚くなり、遠くを見るときには薄くなります。これによって外からの光は水晶体を通るときの屈折の角度が変化し、網膜に像を結びます。このとき正常であればピントがぴったり合う、というわけです。

 

また、太陽光のうち人体に有害とされている紫外線を吸収し、眼を守る役割も果たしています。

 

[図表3]水晶体の図示と動き

 

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