白内障とは、加齢によって目の中でカメラのレンズのような役割を担う水晶体が白く濁り、視力が低下する病気です。60代で約半数、80代に至ってはほぼ全員が、程度の差こそあれ白内障にかかります。高齢化に伴い、今や「目の国民病」と言っても過言ではないこの病気について、眼科専門医が症状と治療法を平易に解説します。※本記事は『図解 白内障かなと思ったら読む本』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

手術の前準備…3日前から、抗菌薬の目薬をさす

手術日が決まったらその3日前から、「減菌療法」といって、抗菌薬の目薬を自宅でさします。これも感染症のリスクを減らすためです。

 

当日は、手術開始時刻の1時間半前までに来院いただき、瞳孔を開く目薬を何度もさします。術後は当然ですが、視界が悪くなりますので、車の運転はできません。そのため来院の際にも、自分で運転してこないようにあらかじめお伝えしています。感染防止のため、メイクはせずに来院いただきます。ただ、女性に多いまつ毛エクステ(人工のまつ毛を自分のまつ毛に接着させる増毛方法)は容易にはとれませんのでそのままで構いません。その分しっかり消毒を行います。

 

手術は局所麻酔で行います。眼科の手術台は歯科と同じように、座ったイスが倒れていってそのまま手術台になるものが多いです。あおむけになったあと、麻酔の点眼薬をさします。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

手術中の「痛み」「不快感」の抑制は非常に重要

一般的に、麻酔は粘膜に良く浸透する性質があるため、眼の手術は術前の点眼麻酔だけでも十分に効くとされています。しかし当院ではさらに、眼を切開したあとも、より痛みが出ないよう眼内に麻酔を注入して進めていきます。これを前房内麻酔といいます。

 

痛みや不快感を極力抑えることは、患者さんが安心して手術を受けていただくために、とても重要というのが私の考えです。麻酔そのものは痛くもかゆくもなく、患者さんは麻酔をされていることにも気づきません。でも患者さんには分からない部分まで気を回し、きめ細かく配慮することも、手術の腕のうちだと思っています。眼の手術はただでさえ、怖いイメージを持たれがちです。仮に、「あそこの医者は腕がいいけど、手術はすごく痛いよ」などと言われたら、二の足を踏んでしまう人が大多数なのではないでしょうか。

 

痛みや恐怖心、不快感といったネガティブな感覚は、心理面だけでなく体調面にも悪影響をもたらします。

 

人は恐怖を抱いたり緊張したりすると、血圧が上がりどきどきしてきます。これが極端になると、眼圧が異常に高まり、術中に駆逐性出血と呼ばれる大出血を起こす恐れがあるのです。眼内の組織が外へ飛び出してしまうため、万が一起こってしまうと著しい視力低下をきたします。

 

手術を安全に行うためにも、痛みや不快感は少ないほど良いのです。患者さんは、手術台に上がる前から緊張している人がほとんどです。眼にまだ何もしていなくても、「痛いんじゃないか」「これから何をされるのか」とどきどきしてしまうものです。手術前の時点で、血圧が急に上がってしまう人もいるでしょう。そこで当院では、手術直前の緊張を和らげるため、リラックス麻酔(笑気麻酔)という、数分程度のごく短時間だけ効く吸引式の麻酔もかけます。患者さんにとっては楽な気分で手術に入れますし、リラックスできれば血圧も安定しやすくなるので一石二鳥です。特に緊張しやすいタイプの患者さんには有用です。

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図解 白内障かなと思ったら読む本

図解 白内障かなと思ったら読む本

川原 周平

幻冬舎メディアコンサルティング

目がかすむ、眩しい、ダブって見える…。その症状、白内障かもしれません。 いまや「目の国民病」といっても過言ではない白内障ですが、近年では精密な器具の開発等により、手術の安全性は高まっています。 とはいえ、納…

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