「養子がいてよかった」から一転。夫の死後…
甥の妻・D子さんは、甥が不在のときでも子どもを連れて訪ねてきて何くれとなく気を使い、気軽に用足しをしてくれる行き届いた人で、Cさん夫妻は心からありがたいと思っていました。
ところが数年前、甥が40代の若さで病気のため亡くなりました。一家の大黒柱を失ったD子さんを気の毒に思ったCさん夫妻は、
「あなたもこれから心細いだろうし、私たちも実の子どもがいなくて将来に不安がある。もしあなたに私たちの老後の面倒を見てもらえるなら、養子になってもらえないか」
と持ちかけ、養子縁組をしました。
以後、それまで以上に親密な関係を築き、やがてC夫妻の夫が亡くなって、葬儀の一切をD子さんに任せることができたとき、C夫人はしみじみと、
「養子がいてよかった」
と思いました。
ところがその後、D子さんに預貯金はじめ財産の全てを管理されてしまい、自由にお金を使うことができなくなってしまったのです。
子どものいない老夫婦の心細さは、私にも想像がつきます。頼ることのできる若い人にそばにいてほしいと思うのも無理はないでしょう。
しかしこのケースに関しては、C夫妻のやり方に問題がありました。
D子さんを養子にして老後の面倒を見てもらう、というのは間違ってはいません。ただし、財産のことは分けて考えるべきでした。
「財産の一部をあげるから、その範囲で面倒を見てほしい」としておき、財産管理については信頼できる第三者に任せればよかったのです。
今や、実の親子関係すら変容してきている時代です。
「親だから」「子だから」という理由で、無条件に親の面倒を見ていた時代は過ぎ去り、親にはなるべく財産を使わせず、少しでも多く残してもらいたい、と考える子どもが増えてきています。
少々ドライすぎるかもしれませんが、親子の情と財産管理は別、と考えておいた方がトラブルを回避できるのではないでしょうか。