本記事は、安田裕次氏の著作『任意売却物件ではじめるローリスク不動産投資』から一部を抜粋、再編集したものです。

頭金がない、不動産仲介料や税金までローンに頼る…

筆者は、1990年、22歳で不動産業界に入りました。90年といえば、まさに不動産バブル崩壊が始まった年であり、それまでの不動産ビジネスとは180度違う方向性が求められました。バブル崩壊にもかかわらず、友人4人と立ち上げた会社は、わずか5年余りで社員60人、年商10億円の企業に成長させることができました。

 

しかし、ちょうどバブル崩壊の時期とも重なって、筆者は、不動産投資に失敗して破綻していくお客様や住宅ローンの支払いに困っている人の窮状を目の当たりにしてきました。

 

大学教授や弁護士の先生にご協力いただいて設立した「一般社団法人 全日本任意売却支援協会」での筆者の経験からすると、たとえば次のような人がマイホームの購入に失敗してしまうことが多く、住まいが競売にかけられる、もしくは任意売却に至るのです。

 

●住宅ローンの返済に無理がある人

長い間、任意売却を支援してきた筆者は、様々な人に話を聞く機会がありましたが、中でも印象的だったのは、金融機関の住宅ローン担当者の「住宅ローンで破綻する人で最も多いのは、頭金のない人です」という言葉でした。

 

不動産購入には物件価格だけではなく、不動産の仲介料や各種の税金など、様々な経費がかかります。「フラット35」や10割ローンといった国の政策を利用し、金融機関が物件価格の100%を融資してくれたとしても、自己資金がない人はそれでもまだ不足してしまうわけです。

 

結局、そうした諸経費もローンに頼らざるを得なくなり、資金計画に無理が生じると、ローン破綻してしまいがちになるということです。貯金がない、金銭感覚に問題がある、貯金できないような綱渡りの家計をやりくりしているようでは、そもそも返済は不可能でしょう。

夫婦間のトラブルも破綻の原因に

●夫婦間のトラブルがある人

マイホームのローン破綻でもうひとつ目立つのは、離婚など夫婦間のトラブルが原因になって、破綻してしまうケースです。たとえば、夫がローンを払い続けるという条件で別居、離婚したものの、元夫がローンを滞納してくるケースが目立ちます。何も知らずに住み続けていた奥さんの元に、大量の督促状などが届くようになったり、最悪のケースでは、いきなり裁判所から競売の通知が来たり、挙げ句の果ては退去命令まで来るようになってしまいます。

 

何も知らない奥さんの元に、大量の督促状が… (画像はイメージです/PIXTA)
何も知らない奥さんの元に、大量の督促状が…
(画像はイメージです/PIXTA)

 

いずれにしても、夫婦間のトラブルは住宅ローン破綻には大きな影響を与えます。我々も、相談には必ず奥さんを同伴するようにとお願いしています。様々な事例を見ていて感じるのは、世の中の大半の夫婦の主導権は奥さんが握っていること。その奥さんの了承がなくては、どんなトラブルも解決に向かわないということです。

無理な資金計画はローン破綻に陥る要因

●事業の失敗、解雇など収入源が不安な人

このケースも多いパターンです。自営業者が事業に失敗する、あるいは会社が倒産して失業してしまった。そんな人がローン破綻に陥るケースが多いのも事実です。特に、デフレ時代は事業に失敗した自営業者のローン破綻が目立ちました。

 

事業の羽振りが最も良い時点でマイホームを購入する人が多く、ピーク時の年収がずっと継続すると信じて、無理な資金計画を立ててしまうのが原因です。事業での資金繰りの悪化、そしてローンの返済、という具合にダブルで資金が不足することになり、あっという間に破綻に陥るケースも珍しくありません。

 

収益不動産にせよ、ワンルームマンションや自宅にせよ、ローンを組んだ以上は毎月きちんと返済していかないと、ローンの滞納になります。では、その住宅ローンを滞納するとどんな運命が待ち構えているのでしょうか。ここでは、ローンを滞納した後にどんな事態が待っているのかを紹介しておきましょう。

ローンを3か月滞納すると「回収」のステージに

まずは、当然のことながらローンを滞納すると銀行から「督促」が入ります。封書などが郵送されてきますが、場合によっては直接訪問を受けて、ローンの返済をするように迫られます。それをさらに無視して滞納を続けると、金融機関にもよりますが、通常は3か月を超したあたりから、回収業務に入るところが出てきます。

 

回収業務は、当初は融資を担当した金融機関の支店の担当者であったりしますが、そのうち債権回収部門の別会社に移ります。債権回収部門というのは、取り立てを専門に行っている企業のことで、その金融機関の系列子会社になります。会社名も銀行名の後ろにxx債権回収会社とかxx保証会社という具合に、ひとめでその金融機関の系列会社であることが分かるはずです。

 

こうした債券回収会社は、その金融機関に属していた社員がほとんどで、なんとなく恐いイメージがあるかもしれませんが、実際のところは法的な手続きに沿って淡々と業務を推進していくイメージです。

保証会社にローン債権が移管すると・・・

金融機関によって、回収業務の方法が異なるとすれば回収のスピードです。銀行などにとって、ローンの滞納は放置すれば「不良債権」になってしまいます。不良債権の増加は、銀行経営にとっては自己資本比率の低下を意味し、経営上大きなマイナスとなり、バブル崩壊以後はそのスピードが求められるようになりました。

 

特に、都市銀行などは海外業務を展開している関係もあり、不良債権を放置しておくことができないシステムになっています。実際に、都市銀行などは住宅ローンを3か月間滞納すると、先に紹介した債権回収会社や保証会社に「ローン債権」そのものを移管してしまいます。

 

こうなってしまうと、「期限の利益の喪失」という名目で分割払いが認められなくなり、回収会社から「一括返済」を求められるようになります。分割で払えないのに、一括では払えるわけがありませんから、あとは借金をしている「債務者」とお金を貸している「債権者」という関係になります。

 

「保証会社に債権が移ったのですが、ここからローン減額などの交渉はできるでしょうか」といった相談をよく受けますが、この段階まで来ると極めて困難であり、残りは次の2つしか選択肢はなくなります。

 

①競売・・・債権者が裁判所に申請して、物件を強制的に競売にかけて債権処理してしまう方法です。

②任意売却・・・競売を避けて、債権者の了解を得て、競売以外の方法で売却する方法です。

 

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本連載は、2014年10月10日刊行の書籍『任意売却物件ではじめるローリスク不動産投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

任意売却物件ではじめる ローリスク不動産投資

任意売却物件ではじめる ローリスク不動産投資

安田 裕次

幻冬舎メディアコンサルティング

サラリーマンが副収入を得る方法として注目を集める不動産投資。しかし不動産は決して安いわけではありません。 初期費用がかかるほどリスクは高くなるため、不動産投資の基本はできるだけ安価で条件の良い物件を探し出すこと…

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